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2018年5月 6日 (日)

 『極夜行』  角幡唯介の探検ノンフィクション

 白夜の反対が極夜。暗闇が続く極寒の北極圏、グリーンランドを一匹の犬ととも歩いたドキュメンタリーである。

 著者・角幡は、エッセイ集の後書きで、なぜ命の限界まで挑むのかについてつぎのようなことを書いていた。

 遭難死の直前まで行ったが奇跡的に生還できた。もう一歩踏み出せばこの世にいなかった。極限であった。ところが、しばらくすると、あれはギリギリではなくて、もう半歩先まで行けたような気がする。で、あらためてもう半歩、一歩先まで行ってみたくなる。そんな内容だった。

 ふーん、そんなものか。度胸のない私にはその気持ちは分からない。探検家とは、そういうものらしい。

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  角幡は今回の探検を周到に準備した。極寒に絶えうる体力づくり、デポまでの輸送(あらかじめ物資を先行地まで運んでおく)、犬の訓練などなど。

 ところが実際に出かけてみると予期せぬことが起きる。トラブルが襲う。GPSは使わない。六分儀で現在地と方向を定める行程なのだが、早々にブリザードで吹き飛ばされてしまう。残るは地図とコンパスのみ。デポに行ってみれば白熊に食料は食べ尽くされていた。

 戻るか行くか、決断を迫られる。麝香牛が捕らえられれば食料は確保できるのだが・・・。

 同行する犬も大変だ。犬の役割は橇を引くほか、番犬の役割もある。白熊が近づけばそれを知らせる。もちろんパートナー、ペットでもあるが、いざとなったら、その肉は食料になる。実際、白熊にドックフードも食われてしまい、食料は残り少なくなる。犬も飢える。体力をなくしてしまう。動けなくなれば、その肉は角幡の胃に治まることになる。実際、角幡は最後の手段としてそれを考えていた。

 トラブル続きだが、僥倖もあって村に帰還することができた。

 おもしろかった。一級のノンフィクションだが、自分がやるとなれば御免蒙る。こんな探検はイヤだ。

 それにしても、犬はどんな気持ちで一緒に歩いていたんだろうか。犬に聴いてみたい。 

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