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2018年6月 9日 (土)

「ゲティ家の身代金」  人質の交換価値

 

 リドリー・スコット監督というだけで、観ておかなくっちゃという気になる。でも、新ゆりではやっていない。新宿まで出かけて観た。

 実話にヒントを得たものという。1973年、石油で巨万の富を築いたゲティ(クリストファー・プラマー)の孫ポールがローマで誘拐される。犯人は1700万ドルを要求するが、ゲティは身代金の支払いを拒否する。払えば十数人いる他の孫が同じように誘拐されることになる、だから拒否するというのだ。ゲティの息子と離婚していたポールの母親(ミシェル・ウイリアムズ)は、ポールをなんとか取り戻そうと交渉人とともに犯人らと接触する。

 息子を取り戻そうと奮闘する母親を描いただけなら、ありふれた誘拐ものになってしまうが、この映画は違う。どういったらよいのか、行動経済学的、交換価値ゲーム的な要素がいっぱいつまっている。

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  人質は交換価値を有している。1700万ドル、母親は、親権をもつ代わりに、夫(ゲティの息子)と離婚する際、慰謝料はもらっていない。資産はない。金づるはゲティだが、支払いを拒否している。吝嗇でもある。人の命より美術品(絵画)の価値に重きを置いている。犯人との交渉は難航するが、警察は犯人をつきとめ、アジトを急襲する。しかしポールはいなかっt。犯人の一人が別のマフィアに人質を売りわたしていた。そして、あらたな交渉が始まる。交渉を進展させるために、犯人たちはポールの耳をそぎ落とし、母親のもとに送りつける。次は、手や足を切り落とすと脅す。

 交渉というゲームを通じて、身代金の調達をどうするのかという母親の苦悩、税法上有利になるような身代金の支払いを考えるゲティの強欲さなどを浮かびあがらせる。

 実際の事件の顛末が、どれほど脚本に反映されているのか知らないけど、うまく作ったものだと感心する。

 あまり話題になっていないようだが、おもしろい映画だ。

 

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