リクエストと錯覚
今年から、プロ野球でリクエスト制度が始まった。
大リーグではすでに実施されている(チャレンジという)が、審判の判定に異議があるなら申し出てビデオ判定を求める制度である。監督がテレビ画面のようなしぐさをするとリクエストの請求になる。審判はビデオで確認して、改めて判定を下す。
しばしば判定が覆る。リクエストが認められ判定が覆った割合は36パーセント(4月)だったそうだ。誤審となるのだが、瞬間を判断するのだから、間違えることはある。ある程度は致し方ない。瞬間を正しくとらえたつもりでも、脳内で映像処理をする際にズレができてしまうのだ。人間の目には限界がある。
誤審かどうかよくわかるのはサッカーのオフサイド判定である。線審は、ボールを蹴り出した瞬間とオフサイドラインの選手の動きを同時に見て判断するわけだが、ビデオを見ると、判断が間違っていると思われるシーンがしばしばある。今のはオフサイドじゃねえだろとかテレビの観戦者は憤ったりするが、抗議をしても判定が覆るわけではないし、ビデオ映像は現場には届かない。
線審は違う二つのポイントを見て、脳で瞬時に映像処理する。ものすごく複雑な処理を短時間でするわけで、そこにビデオ映像とズレが生じるのはある程度致し方ない。脳が嘘をつくとも言えるし、脳の映像処理の限界でもある。このあたりは、脳科学者からの受け売り。
同じ色なのに背景の色によって違う色に見えることがある。同じ長さの二本の線なのに補助線の引き方によっては違う長さに見えることがある。よく知られた目の錯覚である。
ビデオ判定は、誤審というより目の錯覚を補正するものと考えればよい。
明らかな誤審で猛烈に抗議するシーンがよく見られたが、これが少なくなった。それだけでも進歩したってことだろう。
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