小三治独演会 一琴叱られる
小三治独演会に行ってきた。鶴川落語。300席ぐらいのホールだからどこの座席でも聴きやすいし観やすい。私はニ列目。こういう席で人間国宝を聴けるなんてことはめったにない。
開口一番は、柳家一琴。小三治の弟子。弟子と言っても真打ちである。高安と御嶽海を重ね合わせたようなちょっと暑苦しい風貌をしている。
演目は「真田小僧」。この演目は前半だけやる場合が多い。前半だけだと、真田小僧という演目の意味は分からない。真田のさの字も出てこないからだ。かるく普通に演じた。
つぎは小三治。出囃しが鳴ってもなかなか出てこない。4、5分ぐらい経って、ようやく登場した。なぜ遅れたか(いつも遅れるけど)、一琴に小言を言っていたとのことである。
無理に笑わせようとする姿勢がダメだ。オチもいけない。ということで、一琴を舞台に上げ、ひとくさりダメ出しをする。一琴はかしこまったまま。ヘビににらまれたカエルのよう。
一琴に後半の講釈の部分(真田三代記のあらすじ)をやらせたあと、なぜダメなのか、落語の了見といったあたりのことを話す。これが可笑しかった。「ボーッと、落語やってんじゃねえよ!」という感じ。
一琴はさらし者のようになったが、薬になったのではないか。私は一琴の落語は悪くないと思っていたが、師匠の評価は厳しい。
で、このマクラは40分ぐらい続いて、そのあと、小三治の演目は「千早ふる」だった。「小言念仏」ではなかった。
小三治人間国宝の言いたいことをまとめると、「笑点」の悪いところが噺家を毒している。ヒトの悪口をちょっと言って笑わせる。それがいけない。台本があるのもよくない。「笑点」風の笑いが落語なんだと客も噺家も勘違いしている。無理に笑わせることはない。うまくやれば自然に笑ってくれる。
前半は、おこごと。中入り後は、一琴の落語ではなく紙切りだった。一琴の紙切りを観るのは初めて。そういう裏芸をもっていたのか。
出来は本職の正楽や二楽にはかなわない。あたりまえだが。紙切りは、紙を切りながらからだを揺らし、おしゃべりもする。一琴の場合は、無口。喋ると気が散ると言う。ま、そうだろうな。ということで、本職にするにはムリがあるが、余芸としてはいい。
トリの小三治の演目は「長短」だった。長い噺をするのかと期待したのだが、そうではなかった。気の長い男と気の短い男の話。長短の差がどことなくおかしい。可笑しさがにじみ出てくる。小三治らしい持ち味がでていた。
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