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2018年9月21日 (金)

ツグミのことなど

  

岐阜・下呂まで行ってきた。従兄弟が亡くなり、その葬儀のためだ。

ずいぶん長く床についていた。来月見舞いに行くつもりだったが、お迎えの方が早くなってしまった。家族は看護から解放されるわけで、悔やみとあわせて、これまでの介護をねぎらっておいた。

樹木希林が亡くなった。稀有の女優だった。今回のブログ、あれこれ巡って、樹木希林で締めくくるつもりだ。

 

先週、展覧会を観た田中一村の千葉時代の作品に、虎鶫(トラツグミ)や軍鶏(シャモ)を描いたものが多い。

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  トラツグミの羽根はまだら模様をしている。そこからトラという名がついた。

 トラツグミにせよツグミの類は実際に目にしたことはない。バードウォッチングを趣味とする人ならよく見かける野鳥のようだが、あいにくそういう趣味はない。しかし、ツグミというと、わたしはちょっと反応する。

 わたしの母は、ツグミは旨かったと陶然として語ることがあった。しばしば耳にした。どんな味かと訊いたが、とにかく旨かったという返事だった。肉を食べる機会が少ない岐阜の山奥の暮らしだったから、割り引いて考えなければならないが、かなり旨いものだったようだ。

 どんな味なのか、食してみたいとずっと思ってきたが、その機会はなかった。戦後は禁猟となっている。密猟品か輸入品なら手に入るかもしれないが、そういう機会はなかった。

 岡本かの子の「食魔」という小説にツグミが登場する。「虎鶫(トラツグミ)の腸(ワタ)の塩辛」という下りがある。味を描写した表現ではないので、それがどんなものかはわからないけど、鶫の塩辛というものがあったということはわかる。旨そうだ。ますますツグミを食べてみたくなるが、御禁制では無理である。

 母はワタまで食べたのだろうか。

 

 トラツグミは(ヌエ)とも言われる。ヌエは一般には怪獣とか妖鳥とされている。諸説あるが、頭は猿で胴は狸、手足は虎か鶫、声も鶫。キメラ・バードである。トラツグミの声は聞いたことがない。不気味な鳴き声ということらしい。

 三田完の小説に「」がある。細かなことは省くが、登場人物に、樹木希林をモデルにしたような人物が登場する。読めば、ああ樹木希林だなとわかる。人を食ったトリッキーな人物として描かれている。

 樹木希林の演技は尋常ではなかった。セリフにならないようなセリフを口にするのが抜群に上手かった。不気味なほど凄かった。鵺だな。

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