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2018年10月 5日 (金)

香月泰男展 

  

 新宿住友ビル(三角ビルね)に、平和祈念展示資料室がある。

 シベリア抑留者や戦後の引揚者の様子を記録した展示室である。ビジネス街の高層ビルに似つかわしくない歴史資料展示室で、ほとんど知られていないが、シベリア抑留などの資料が備わっており、一度は観ておきたい場所である。

 そこで、香月泰男展をやっているというので、ちょっと覗いてみた。

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  香月泰男は、自らのシベリア抑留の体験をもとにした絵を画いてきた。今から50年ほど前、『生き急ぐ』(内村剛介著)を読んだ。その口絵が香月の「有刺鉄線」だった。それで初めてその名を知った。

何年か前、20年ぐらい経つか、世田谷美術館で香月泰男展が大々的に開かれたことがある。そこで、香月泰男の全貌を知ることができた。あれからずいぶん経つわけで、久しぶりに作品を見てみたくなった。

 展示作品は思いがけず少なかった。スペースからして、こんなものかもしれない。

 ラーゲリに収容された人達の表情を抽象化した絵が凄い。落ち込んだ頬、うつろな眼 極寒のシベリアで望郷の想いにとらわれながら絶望する姿を描いている。

 『生き急ぐ』以降、シベリア抑留の記録や小説をたくさん読んできた。石原吉郎の詩も。最近では『生きて帰ってきた男』(小熊英二著)を読んだ。

 読んで、なにか血肉になったかというと、なにも身についてはいない。人間の、国家の、暴力性のひとかけらを知った程度である。

 香月泰男展は10月28日までやっている。

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