扇辰は「雪とん」
友人とともに国立演芸場12月中席に行ってきた。
主任の入船亭扇遊が休みで、トリは入船亭扇辰に回り、あらたに橘家文蔵が高座にあがることになった。わたしは文蔵ファンだからこの変更は歓迎だ。
落語は7席、あとは色物。いくつかをピックアップすると・・・
古今亭志ん橋は久しぶりに聴く。声がかすれている。噺家は声が命。この声の衰えは歳のせいかそれとも喉の病気か、気になる。それでも懸命に演じた。演目は「岸流島」。船に乗りあわせた侍のいざこざを描いたもので、武蔵や小次郎とは関係ない。
文蔵は、軽いが得意ネタをぶつけてくるはず。「道灌」あたりかと予想したら、そのとおりだった。「道灌」は前座ネタの代表であって、誰がやってもそこそこの出来となるが、文蔵がやるとさらに磨きのかかった芸になる。文蔵以上の「道灌」を聴いたことがない。うまいものだ。
トリの扇辰。「雪とん」だった。この噺は扇辰以外では聴いたことがない。扇辰の得意ネタである。中席のトリになったから「雪とん」をぶつけてきたのだろう。色っぽい娘がでてくる。それをさらに色っぽく演じる。あの顔で、ある。ストーリーをひとことで言うのは難しい。田舎の旦那が見初めた女を若い鯔背な男に取られてしまう話である。オチは、お祭りの山車にひっかけ、道理で、おらはダシにされた。
もうひとつ、紙切りもあった。林家楽一。めったに常設の寄席に行かないから紙切りを観る機会は少ない。楽一も初めて観た。正楽の弟子。紙切りというと体をゆすり、おしゃべりをしながらハサミを使うが、楽一は静かに切る。しゃべりも訥々。それも芸の内。できあがった作品はバックライトのついたタブレットで見せる。文明の利器というほどではないが、見せ方も進化している。
訥々話でおもしろかったのは正楽師匠のこと。腕は衰えていないが耳が遠くなった。お客さんのリクエストがウエディングドレスだった。で、切ったのは、梅とウグイスだった。ほんとかね。
ということで、けっこうな年の瀬の一日でした。
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