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2019年6月 9日 (日)

桂歌蔵『よたんぼう』 落語家が書いた落語小説

  桂歌蔵は歌丸の弟子で、現役の真打ち。『よたんぼう』はその歌蔵が書いた小説である。中卒で落語界に飛び込んだ男の姿を描いている。
 落語界のことなら、ま、おおよそのことはわかる。なじみの世界である。
 鏡生の内弟子となった鏡介は師匠のもと、四年間の前座生活を続ける。厳しいと言えば厳しいが、師匠は三遍稽古で弟子を鍛えていく。師匠が日を置いて三回手本を見せる。そして師匠の前でやってみて、オーケーならそれを口座で演じてもよいとなる。最初の演目は「道灌」だった。こうやってネタを増やしていくのだが、実際には、師匠から直接教わることはない。別の師匠から教わるのがふつうだが、まあ、それはよい。
 ネタを増やし、やがて二つ目となって、落語以外の仕事もこなすようになる。テレビのレポーターである。風俗から軽いバラエティーまでコナすが、やり過ぎもあり、師匠から、落語をきちんとやれ、レポーターをやめるように言われる。鏡介はレポーターを続けると答えると、ならば破門だと告げられる。
 レポーターの仕事は海外ロケまでこなすが、次第に細っていき、それもなくなり、放浪生活になる。いきつくのはインドの場末。酒浸りでとなる。
 こんなストーリー。プロローグで、インドから帰国し、郡山の小屋で細々とした落語をしていることが明かされているので、破門後のおおよその展開がわかる。
 ここから、事態は予想外な方向に展開していく。これがおもしろい。ラストの盛り上がりを落語好きな人と語り合いたい気分になる。禁じ手じゃないかと言う人もいるかもしれない。
鏡介をとりまく落語家仲間の姿もよい。テレビドラマか映画にしてもおもしろいんじゃないかな。
 Dsc_0861-1 小説も書く落語家は何人かいる。落語もやる小説家ともいわれる立川談四楼には『ファイティング寿限無』などの作品がある。新作落語の三遊亭白鳥には『ギンギラ★落語ボーイ』がある。歌蔵のこの作品もそれと比べて遜色はない。

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