「江島屋怪談」 貞水の名人芸
国立名人会、今月のトリは講談の一龍斎貞水。人間国宝である。
「江島屋怪談」(江島屋騒動とも言う)を演じる。三遊亭円朝が作った怪談噺である。
結婚披露の席で花嫁の振り袖がはがれ落ちてしまう。江島屋で買った衣装は、縫い糸を使わず、のり付けしただけのイカモノだった。満座の席で恥をかかされた娘は悲嘆し、川に身を投げて死んでしまう。そして月日が経ち、老婆となった娘の母親は江島屋にたたりがあるよう呪いの儀式を続けていた。
この演目、志ん生バージョンをCDで聴いたことがある。今回は、それを講談にしたものだ。貞水はまもなく80になる。衰えもある。めったに聴けなくなるのではないかと思い、名人会に足を運んだ。
その前に落語。中トリは桂小南。ふだんは古典しかやらないが、今回は「ハワイの雪」だった。へーっと思う。「ハワイの雪」は柳家喬太郎の新作である。喬太郎以外では柳家三三がやるが、小南がやるとはねー。私が知らないだけで、一昨年の小南襲名の高座ではやっているという。
幼なじみから届いた便りがきっかけでハワイを訪れる爺さんの話。口調はいつもの小南節。喬太郎の匂いはない。小さなギャグを盛り込みながらの、いつもの名譚亭コナンだった。
で、もどって「江島屋怪談」、障子やあんどん、小道具をしつらえての高座だった。照明と鳴り物が入る。おどろおどろしさを引き立てる。落語ではめったに観られない世界である。
貞水は年齢を感じさせない若々しい声だった。名人芸である。
で、最後の決めことば。おなじみの「げに恐ろしき、執念じゃなぁ」だった。
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