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2019年6月25日 (火)

 「僕たちは希望という名の列車に乗った」

  大学時代、今から半世紀ほど前、西洋哲学の教授が、チェコ動乱(1968年、後にプラハの春といわる)を評し、「ハンガリー動乱はソ連が過ったが、今回はソ連が正しい」と語ったのを記憶している。意外な発言だった。バカ言うなよと思ったがどう反論すべきか、その根拠もなかったので、黙っていた。
6401_20190625113901 「僕たちは希望という名の列車に乗った」。 川崎市アートセンターで観てきた。ハンガリー動乱があった1956年の東ドイツが舞台。まだベルリンの壁のない時代である。東ドイツの二人の高校生が西ベルリンに出かけて映画館に入る。ニュース映画でハンガリー動乱を知る。自由を求める民衆の多くが犠牲になったのに衝撃を受ける。
 帰国した高校生は犠牲者を悼み、二分間の黙祷を捧げるようクラス全員に提案し、実行した。これが反ソ・反革命的ということで問題となった。首謀者探しとなったが、クラス全員は黙秘した。教育大臣まで知ることととなり、学校側の追及はより厳しい事態となった。生徒を分断させ首謀者をあぶり出そうとする学校側の懐柔と脅迫策により生徒たちは次第に追いつめられていく。このあたりがみどころ。緊張感あふれるシーンが続く。
 生徒たち(エリート教育を受けている)は卒業試験を迎えるシーズンになるが学校はこれを受けさせないと言う。動揺する生徒たち。大学に進学できないと労働者階級として低賃金に耐えて生きていくことになる。
 で、どうなるか。長たらしい映画の題名(僕たちは希望という名の列車に乗った)がそれを表している。タイトルがネタバレになっているのはどうかと思うが、多くは西ベルリンに逃れ、あらたな人生に踏み出すことになる。テオ(主人公の高校生)は西に向かう列車の中でネクタイを緩める。
 実話だそうだ。その後、東ドイツがどうなったかはご存じだろう。1989年にベルリンの壁はなくなり、東西統一されたが、経済格差はいまも続いている。映画「希望の灯り」(5月30日当ブログ参照)はその辺りを映している。
 もう一本思い出した。冷戦下の東ドイツの監視社会を描いた映画に「善き人のためのソナタ」がある。あれは名作だ。
 さらにもう一本、関連した映画がある。こちらはチェコ動乱(プラハの春)を背景にした「存在の耐えられない軽さ」。 前半は社会主義下での自由な雰囲気を描いていた。たぶん実際のプラハも軽薄とも思われる気分があふれていたのだろう。
  冒頭の教授は、それが気に入らなかったのかもしれない。

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