くだんのごとし
マツコ・デラックスの姿をテレビで始めてみたとき、その牛のような異形な姿に「くだん」を思い浮かべた。
くだんは「九段」ではなく「件」。人べんに牛。人と牛が合体した化け物である。マツコが化け物というわけではないけど。
小松左京に「くだんのはは」という怪奇小説がある。名作と言われる。時代は戦争中。家の奥に娘がいて姿を現すことはない。その娘の母親が、広島が大変なことになるとか、もうすぐ戦争が終わるなどと予言する。娘が語ったものらしい。予言は当たる。ラストで、振り袖を着て顔だけが牛の醜い娘の姿が明らかにされる。そういう奇っ怪なストーリーである。
くだんは小松左京が創作したキャラクターではない。日本各地にくだん伝説があった。半人半牛の妖怪。吉凶について重大な予言をする。戦争中には、くだんがいると空襲を免れるといった噂も流布した。
内田百閒に「件」という短編がある。くだんである。こちらは、顔は牛、からだは人間。野っ原にいて命は三日しかない。そこに予言を聞こうと大勢の人が押し掛けるという話である。
異形で醜いが人に危害を与えはなしない。危険を知らせ、防災を促すような存在である。世情に不安があるとき、それを祓う巫女といったところか。
そういえば、マツコ・デラックスは羽衣をまとったような扮装をしている。巫女さんだ。件の如し、か。
« 「旅のおわり世界のはじまり」 | トップページ | 梅雨明けはまだ 「天気の子」 »
「世事・世の中」カテゴリの記事
- 嘔吐と点眼(2025.02.07)
- まちがっているかもしれない(2025.01.20)
- どんど焼き(2025.01.18)
- 地下水道(2025.01.12)
- あけましておめでとうございます(2025.01.01)
コメント