崖の上の塙さん
先の参議院選神奈川地区に、圷なんとかという人物が立候補していた。圷とは珍しい姓である。アクツとよむ。阿久津と表記するアクツさんもいる。
圷とはもともとは地名(地形)である。低地とか崖下を意味する。辞書では低湿地とするものが多いが、必ずしも湿地ではない。親辞書をそのまま引用したからそうなった。
『日本国語大辞典』では「多くは川沿いで低い定地をいう」とある。「一面に平たる低地を云へり、所謂塙と云う所の下の地を云へり・・・」
崖の上が塙(はなわ)で、下が圷(あくつ)ということだ。「塙」を引くと「山のさし出た所、また土の高く盛りあがった小高い所」とある。
必ずしも崖上でなくともよい。小高く盛り上がったところでも使われるということだ。
小高いところで、思い出した。ちょっと飛躍する。『蘭学事始』の有名なエピソード。鼻とは顔の中でフルへッヘンドするものなりという文のフルヘッヘンドの意味がわからない。いくつもの用例からそれが「うず高い」という意味だと推測するまでずいぶん時間がかかってしまったという苦労話である。
顔の中でうず高いところは鼻。うず高い場所は塙。崖っぷちは端。みな「は」がつく。先端とか端っこという意味である。「は」は大和ことばで、端っこを意味している。花も先っぽに咲く。
もうひとつ飛躍。崖で、ドドイツを思い出した。
いっそ死のうと 覗いた崖の 下でオスメス 忍び逢い
イ・ノ・シ・シの折り込みになっている。
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