「プリズン・サークル」 刑務所での更正プログラム
刑務所は刑罰を与えるためにあるが、もうひとつ更正という役割もある。日本ではほとんどが前者にウエイトが置かれているが、更正に重点を置いている国もある。手に職をつけたり、精神面でのケアをすることが刑務の中身になっている。
刑罰が中心だと、金も仕事も伝手もなければ、出所後、再び犯罪に手を染める確率が高くなる。実際、日本の刑務所に服役する人の大半は累犯である。
「プリズン・サークル」という映画を知ったのはつい先だってである。新潮社のPR誌「波」に、この映画の監督の坂上香さんとブレイディみかこさんの対談が載っていた。刑務所での、受刑者の社会復帰を促す活動を描いたドキュメンタリーである。
調べてみると、渋谷のイメージフォーラムでやっている。封切りして一ヶ月以上たっているので一日一回しか上映していない。さっそく出かた。
島根県の浜田市にある刑務所でのTC(セラピティック・コミュニティ)の実際を様子を描いている。
さまざまな犯罪で服役している若者がこのプログラムの受講者である。貧困、虐待、いじめなどの体験やなぜ犯罪に及んだかをみんなの前で発表する。その後、数人で話し合う。生い立ち、なぜ罪を犯したのか、被害者への思い、どう罪を償えばよいのか、といったことである。そこから反省やあらたな気づきが生まれる。
グループセラピーという精神分析の手法で、広く普及している。日本でも交流分析という手法が流行ったことがある。目新しいものではないが、日本の刑務所では2009年から取り入れられているのだそうだ。
映画は4人の受刑者を追っているが、親からの虐待やいじめを経験している。ちょっとやるせない。それが犯罪に結びついたわけではないけれど相関関係(因果関係ではない)はある。
いろいろ考えさせられる。このプログラム(2年間)を受けた人の再犯率は平均の半分以下だそうだ。それだけ効果があるとみてよい。しかし、日本ではここだけしかTCは実施されていない。更正プログラムは貧弱だ。
ついでのひとこと
この映画、4月4日から川崎市アートセンターでも上映される。わざわざ渋谷にいくこともなかった。
お近くの方はしんゆりでどうぞ。
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