『魂の痕(きずあと)』 戦前の済州島の姿
梁石日(ヤンソギル)の本を久しぶりに手にした。
『血と骨』が著者の父親がモデルなら『魂の痕』は母親がモデルといってよい。
舞台は戦前の済州島。日韓併合後、日本の支配が浸透していく。18歳の春玉は土地の有力者の息子のもとに嫁ぐ。夫はまだ10歳だった。甘えん坊。春玉は奴隷のように働くが、心休まることはない。幼い夫もしだいに暴力により春玉を支配しようとしていく。思い切って済州島を脱出。日本に渡って大阪の紡績工場で働き始めるが、工場長に犯され、子を身ごもる。そして、知り合いの飲み屋で働き始める。
といった波乱の人生。後半になって金俊平が客として現れる。この名前、見覚えがある。『骨と血』の主人公である。
金俊平は春玉を暴力的に扱う。春玉は傷つくが、暴力に屈しながら新たな傷によって古傷を癒していく。そうして生き抜いていった。
すさまじい人生だが、済州島自体も悲惨で貧しい島であった。
在日コリアンには済州島出身者が多い。悲惨な暮らしから脱すべく職を求めて日本にやってきた。1922年に島と大阪間に定期便が開設されたこともあり、大阪に住まう人が多くなった。そうしてコリアンタウンが誕生した。島を脱したものの、貧乏と差別から脱することはなかった。
本書は戦前の物語だが、済州島からの難民・移民は戦後も続いた。戦後、米軍が絡んだ対立が起き、多くの島民が殺された。四・三事件という。この混乱で日本に逃れてきた島民は何万人にも達する。
マルセ太郎という芸人がいた。20年ほど前に亡くなったので知らない人も多くなっているが、渋い芸人で、熱烈なファンも多くいた。「スクリーンのない映画館」というひとり芝居が人気だった。梁石日と同じく親は済州島出身、在日二世である。3歳ほど違うが出身高校も同じ。二人の対談を読んだことがあるが、詳細は忘れてしまった。
ただそれを思い出しただけのこと。
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