多目的トイレの神様
ここ一月ほどで、多目的トイレはすっかりおなじみになった。へー、そんな使い方があったのかという思いより、ちゃんとしたところでやれよと言いたいが、ま、どうでもよい。
アンジャッシュ渡部のトイレは3密だった。
密室、密会、密着。新3密ね。
多目的トイレは新幹線の列車で一回だけ使ったことがある。ドアノブを懸命に引っ張ったが、まったく動かない。あせった。あれ、開閉はボタンでやる。押すだけでよい。しばらくしてそれに気づいたが、使い方はちゃんと大きく書いておいてもらいたいと、そのときは切実に思った。
多目的トイレの切実な使い方では、赤松利市の例がある。ノンフィクション『下級国民A』の中に出てくる。
復興の除染作業の日々。午前4時過ぎ、著者は始発電車を待つ間、多目的トイレでひとときを過ごす。同僚の作業員との接触を避けるためだ。便座に座り、ホカホカのカレーパンを口にし、缶コーヒーで飲み込む。
トイレに暖房はないが、風が吹き込む宿舎の部屋よりはまし。温かいのは便座だけというサラリーマン川柳の一節を思い出す。
多目的トイレの神様は何を見ていたのだろうか。渡部ではなく、赤松の方ね。
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