『流離譚』を読みはじめる。
しんゆり映画祭はちょっと一休み。30日に再開される。上映作品の詳細は映画祭のウェブサイトをご覧いただくとして、目立たない作品の中におもしろいものがあることにいつも気づかされる。
それにしても、コロナ感染予防対策がすごい。ソーシャルディスタンス、マスク着用、アルコール消毒、LINE登録・・・。スタッフは消毒シートを持ち歩いている。
話は変わる。友人から安岡章太郎を読むように勧められた。初期の作品はいくつも読んでいるが、後年というか還暦ごろの『流離譚』は読んでいない。興味はあったが、この作品は長いから読むのを躊躇してきた。友人のお勧めならと読んでみようという気になった。
図書館に行くと開架の書棚に安岡章太郎全集があった。『流離譚』は二冊に分かれている。上巻を借りて読み始めた。
この本が安岡家のルーツを描いたものとは知っていた。ラストは安岡家の墓のシーンだったような気がするのは、本屋でラストだけ立ち読みしたからか。そうであるかどうか自信はない。
日記や手紙、当時の資料がいくつも出てくる。活字に翻刻したものだが、幕末の古文書だからすらすらというわけにはいかない。読めない漢字もある。しかしじっくり読めばおおよそのことはわかる。さらに基礎知識はある。ほら、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』ね。あれを読んでいれば当時の土佐藩の様子、たとえば上士・郷士の対立、山内容堂、竜馬、脱藩といったことは頭に入っている。
野中兼山の名が出てくる。家老であったが失脚。親族は幽閉され、社会から孤立させられた。この事実も知っている。大原富枝の代表作『婉という女』である。野中の血筋が途絶えるまで幽閉された。子を産めぬからだになってからようやく解放された。残酷な話である。
安岡章太郎の曾祖父覚之助は戊辰戦争に従軍するが会津で戦死する。その弟の嘉助は藩政を握っていた吉田東洋の暗殺に関わり脱藩。京で天誅組に加わる。戦さと逃避の末、捕らえられ刑死となる。
上巻は嘉助の動向を中心として描かれる。吉田東洋を手に掛けて脱藩、京にのぼり天誅組に加わる。天誅組は土佐藩の連中を中心とした尊皇攘夷の過激派である。勢いはよかったがこれといった戦略はもたず、活動は広がらなかった。結局は過酷な逃避行の末、雲散霧消していった。幕末のあだ花だった。
歴史の裏で無名の多くの人々が犠牲になった。本書からはそれが読み取れる。
ということで、まもなく上巻を読み終える。あとわずかだが、これですんなり下巻にはいかない。この間、たまった雑誌もある。ひとまずそちらに向かう。
読むのにくたびれるが、おもしろい本だ。
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