樽柿 渋柿
くだもの屋の店頭には柿が出回るようになった。平べったいさわし柿が多い。
さわし柿は本来は渋柿である。アルコールでシブを閉じこめて甘くしたものだ。少量のアルコール(焼酎)と一緒にビニール袋に入れておくと渋が抜ける。
さわし柿は、かつては樽柿とも言った。アルコール分の残った酒樽に入れておくと甘くなった。渋みの成分タンニンがアルコールの作用によりペクチンにくるまれてしまうので渋みが抜ける。その理屈はともかく、昔の人はそれを知り、酒樽で甘柿とした。わたしの祖母はサルチル酸で渋みを抜いていたのを記憶している。サルチル酸もアルコールの一種だ。今は食品添加物として認められていないようだが・・・。
樽柿とあだ名された人がいる。偶然ラジオ番組で知った。幸徳秋水である。
幸徳秋水はいつも渋い形相で人を寄せつけないような雰囲気があった。ところがひとたび酒が入ると饒舌でユーモアあふれる姿に変貌したという。ここから名付けられた。うまいネーミングである。
甘みとは逆に、柿でジャムはできないと聞いたことがある。熱を加えると、ペクチンが少ないのでくるまれていたタンニンがもとに戻ってしまうからだ。柿ジャムはできない。あるとすればペクチンを添加し、砂糖たっぷりにすればうまくいくかもしれないけれど、わざわざジャムにすることもない。
わが麻生区は柿の大産地だった。禅寺丸柿は、日本で初めて見つかった甘柿である。大都市にも出荷され、ここらの農家は大いに潤った。今は商売にならない。実が小さくて種が大きいからだ。富有柿や次郎柿にはかなわない。
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