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2020年12月11日 (金)

宮尾登美子の世界 『綴る女』

 宮尾登美子の『天涯の花』をパラパラと読み始めた。以前読んだことがあるけれど、もういちど読みたくなった。

 宮尾登美子の小説ではあまり評価されていないようだが、好きな作品だ。とくに前半がいい。

 孤児で養護施設に育った珠子は15歳のとき、剣山の中腹にある神社の宮司夫妻の養女となる、という物語である。珠子の純真で、けなげな生き方が心に響く。さらに土佐弁が心地よい。

『天涯の花』を読みたくなったのは、林真理子の『綴る女』を読んだからである。宮尾登美子の評伝である。評伝と言う割には内容は軽く、薄い。ま、これがマリコ風というならそうなのだろう。この本に『天涯の花』についての言及はない。もっぱら自伝的小説である『櫂』や『岩伍覚え書』が採りあげられるのはいたしかたないことだろう。

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 改めて読んでみて、忘れている場面は多い。剣山のような人里離れた寂しいところに行くことはなかろうと先生は心配するが、観たばかりの映画。新藤兼人の「裸の島」よりましと珠子は答える。こんなシーンもあったのだ。念のために付け加えると、島の畑まで船で行って水やりをするだけのシーンが続く映画である。

 ということで、ほかに読む途中の本もあるけれど、そっちは、ちょっと一休み。

 ついでのひとこと

 一龍斎貞水さんが亡くなった。貞水さんの高座はそれほど観ていないが、これが見納めになるかもしれないと思い、昨年の6月「江島屋騒動」のライブを観に行った。いわゆる舞台装置や照明を駆使した立体講談である。たしかに見納めになった。

 晩年、貞水さんの容貌は瀬戸内寂聴さんに似てきた。そう思いません?

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