『沙林 偽りの大国』
地下鉄サリン事件のことはよく覚えている。オウム真理教関連の本もいくつもの本を読んでおり、それなりの知識はあるつもりだ。しかし、わからないことも多い。
邪悪で倫理観のない教祖に、分別のある若者がなぜ魅せられていったか。よく出てくる疑問だが、ほんとうにわからない。超能力もインチキ臭い。ポアなどとよく言えたものだ。人間の認知能力、判断能力などそんなものだろうか。幻想を受け入れてしまうのが人間だと言う識者もいるけれど、どこか途中でおかしいと気づくはずだ。
帚木蓬生の『沙林 偽りの王国』を読んだ。オウム真理教の犯罪を九州大学医学部沢井教授の視点で描いた小説である。
沢井教授は第一次大戦で使われたり開発されたりした毒ガス兵器の研究をしていた。サリンもそのひとつ。松本サリン事件のあと、警察やマスコミから問い合わせが殺到することになる。
捜査陣やマスコミ、教団内部の動きではなく、理化学的知見を中心にした内容になっている。サリン、ソマン、VXといった毒物の特性、症状とか治療法であるが、文系人間にはよくわからない。その詳細にわたる部分を簡略化してくれるとありがたいが、しっかり書き込んである。で、本書は560ページものボリュームになってしまっている。そこを我慢して読み進んだ。
タイトルの「沙林」は、サリンを中国語だとこう書くのだそうだ。
最後に著者は、金正男殺害について触れている。殺害にはVXが使われた。こういう毒薬を平気で使う国、あるいは組織はなんとも不気味である。
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