女のさしすせそ
「女のさしすせそ」なることばがあるそうだ。
調味料を入れる順番に、さしすせそがある。砂糖、塩、酢・・。あれの女バージョン? と思ったが、そうではない。応接語である。
さすが
知らなかった
すごい
センスがよい
そうなんだ
これらをつかうと、男がよろこぶ、ということらしい。
銀座のホステス(銀座でなくてもよいが)のテキストに載っていそうなことがらである。ま、女に限定することはあるまい。女に対してつかっても有効である。わざわざ女をつけることはない。「接客のさしすせそ」と言うべきで、男をバカにしているようにも感じる。男は単純な動物と見下している。さらに言えば、女の処世術ということならば、女に対しても失礼な表現のようにも感じる。
とはいえ、男女を問わず、年齢を問わず、こうした合いの手を入れることは大切である。聞き上手、ほめ上手というのは、相手にきちんと向き合っている、無視していないというサインである。
こうした応対語をつかうのが抜群にうまい人がいる。銀座のホステスにもいるだろうが、思いつくのは幇間である。たいこもちね。
幇間はいまや絶滅危惧種であって実際に会ったことはない。落語に登場する。「鰻の幇間」「たいこ腹」「愛宕山」あたりを思いつく。相手を徹底的にもちあげる。落語ではしくじる話になっているが、旦那、ご機嫌よろしゅうようで、に始まり、先のさしすせそを駆使することなど自由自在である。
身近に幇間もどき人はいる。ほめるのがうまい。まねできないほどに相手をくすぐる。これも処世術である。
ほめるだけならテレビでも見かける。テレビショッピングには歯の浮くようなほめことばをつかうタレントが登場する。食レポが得意というか、それを職業にしているタレントもいる。
ひとくち口に入れれば、たちまち陶然として、おいしいとささやく。たかがB級の餃子であっても、絶品! 今までこんなにうまいものは食べたことがないと持ち上げる。別の番組にも登場しておなじようなことを言っている。ま、視聴者も、そうかいなと眺めるだけで、別に苦情を発すわけではない。
でも、たまには、微妙、オレこの味、苦手だわ、まずい! という食レポがあってもよいと思うが、食レポが仕事になっているなら言えないか。
フォアグラの料理を紹介する番組があった。レポーターが「フォアグラが苦手な人でも、こうすればおいしく食べられますね」と語った。
フォアグラが苦手なら、食うな!
写真はガウラ。初めて聞く名前。道端というか他所の庭でよく見かける。AIは100%ガウラと自信をもって表示する。
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