神田伯山独演会
神田伯山の講談を聴いてきた。昨年の7月に伯山(松之丞改め)襲名披露の会として実施される予定だったが、例のごとく延期され、一年後の実施となった。
人気の講釈師だから多くはチケットの払い戻しをしなかったようだ。満席となった。1000人を越す大ホールが満席となるのはコロナ下では珍しいというか初めて。隣に人がいると感染が気になる。隣の人もそう感じているかもしれない。
講談は衰退する演芸だったが、松之丞の出現でたちまち盛り返した。将棋界が藤井聡太少年の活躍で将棋ブームを呼び起こしたのと同様である。
成金ユニット(落語芸術協会)時代に松之丞をよく聴いた。会を重ねるに連れ、松之丞人気が増していくのを感じていた。小痴楽なども人気があったが、ユニット解散のころにはダントツとなった。成金のチケットを買おうと窓口に行くと、今回は松之丞は出ません、それでいいですかと訊かれたことがあった。
あのころは、松之丞のマクラの辛辣さ、毒舌ぶりが印象に残っている、同じ芸人の悪口である。先輩の悪口をさらっと言って笑わせた。
講談と落語で同じ演目でもタイトルが違う場合がある。
今回の演目は次のとおり。終演後に貼り出された演目表を記しておく。
演目
松麻呂 谷風の情け相撲
伯山 出世の春駒
伯山 小幡小平次
伯山 人情匙加減
開口一番は神田松麻呂。伯山の弟弟子である。演目の「谷風の情け相撲」は、落語では「佐野山」として知られている。未熟のせいか、聴きづらい。ホールの音響がわるいんじゃないかと思ったが、そうではなかった。伯山を聴いてわかった。松麻呂は声の通りがわるい。
きょうの伯山は三席。「出世の春駒」は「寛永の三馬術」のうちの冒頭の一幕。三代将軍家光公の前で、曲垣平九郎が紅梅を手折るため愛宕山の急勾配(紅梅とのしゃれ)を駆け上がったという故事を描いたものである。それより、曲垣平九郎なんて、年寄りしか知らないんじゃないか。
講談が得意とするジャンルに怪談ものがある。「小幡小平次」はそのひとつ。小幡はコハダと発音する。殺された小平次が幽霊となって復習するという物語である。
「人情匙加減」は大岡越前の政談もの。かなりいい加減な中身なので気楽に笑える。
「小幡小平次」がいちばんおもしろかった。威勢のいい戦記ものもいいが、怪談ものもすばらしい。語りにリズム感があり、張りのある声も心地よい。怪談ものなら第一人者は昨年亡くなった一龍斎貞水だった。あのあとを継いでもらいたい。
ところで、最後に。16日に同じ麻生市民館大ホールで立川志らくの独演会がある。こちらのチケットはあまり売れてないらしい。私は行かない。テレビでは人気なんだけどね。
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