官僚たちよ!
中央の若手キャリア官僚は忙しい。過労死ラインをはるかに越えて勤務を強いられる場合もある。厚労省の役人はコロナ対応に追われている。国会開催中は寝る暇もないぐらい。そうだからか、キャリア官僚になりたがらない学生が増えている。やめちゃう若手も多い。
というのが、巷間伝えられる官僚の実態である。タイヘンなんだ。
ところがそれを覆すような不祥事も起きている。通産省の20代のキャリア二人が給付金詐欺を働いていた。頭脳的計画的な犯行で、なおかつバレないよう偽装工作もしていたという。ヒマなんだ。死ぬほど忙しければ業務外のことなど目もくれないはずで、時間的余裕があったということだ。一方で過労死レベル以上がいて、もう一方でふつうの公務員レベルがいたということか。
若手キャリア官僚を扱った『あしたの官僚』を読んだ。厚労省のキャリア係長の奮闘ぶりを描いている。いくつもの係を兼務している。たまたま窓口になったばかりに仕事を押しつけられていく。終電ぎりぎり、ときとして役所で寝泊まりする毎日が続く。代議士からの恫喝、国民からの苦情にも応えていかねばならない。過労死レベル以上の勤務が続く。
展開は劇画的。荒っぽい部分もあって(重要なくだりを飛ばしている)、出来は今一つだが、それこそ劇画だから山あり谷あり、スリリング。最後は明るい光が射し込んでくる。たてわり行政の不備や有能な若手官僚のあがきのようなものは伝わってくる。
表紙のイラストも劇画的である。
で、あの給付金詐欺の二人、今後どうなるのだろうか。けっこうしたたかに生きていくのではないか。そんな気がする。
ついでのひとこと
きのうの朝日新聞に『霞が関のリアル』という新刊本の広告が載っていた。
惹句にこうある。「霞が関の不条理な激務は、精神疾病、相次ぐ退職,なり手不足といった問題だけでなく、官僚の能力発揮を妨げ、国の政策を停滞させている。」
ふーん、そうか。
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