「くじらびと」
日本人は捕鯨に許容的である。今はなくなったが、鯨肉をよく食べていた。安くて栄養がある。わが屋でも鯨ベーコンをよく食べた。学校給食でも鯨の竜田揚げは定番だった。プロ野球にも、大洋ホエールズというチームがあった。
それが様変わりしてしまった。今や捕鯨はほとんどなくなった。クジラを獲るなんてヤバンだ、かしこいクジラを殺してはならないというのが世界の風潮になっている。日本の食文化だと反論しても聞く耳をもたない。
捕鯨はほとんど絶滅しているが、わずかに残されているところがある。
アートセンターで「くじらびと」を観てきた。ドキュメンタリーである。チラシには、インドネシア・ラマネラ村では年間10頭ほどのクジラを獲り、1500人ほどの村人を支えているとある。マッコウクジラのほかマンタも捕っている。その一部を野菜やバナナと物々交換して何百年も生きてきた。
銛で突き刺す漁法である。船先からクジラの急所をめがけてジャンプして銛を撃つ。映画の後半はそのシーンとなるが、銛を放ってからが大変である。一撃では死なない。クジラは暴れる。尾ひれの反撃で銛撃ちが死ぬことがある。船が転覆させられることもある。大格闘となる。
カメラは船上だけでなく空中や海中からもその格闘を追う。勇壮。迫力あふれる映像となっている。
くじらとりを描いた映画や小説はいくつもあるが、迫力という点ではこの映画に勝るものはない。
思い出したのは村山知義の『忍びの者』。第三巻は霧隠才蔵が主人公になる。才蔵は紀州のくじらとりだった。それが忍びを学び、朝鮮に出兵する。戦に敗れた才蔵はのちに真田十勇士となる話である。
才蔵にはくじらとりの血が流れている。
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