「べルファスト」
イギリスはEUを離脱したが、北アイルランドは中途半端な状態におかれている。国家としては離脱した。しかし通商面では北アイルランドはEUにとどまっている。加盟国であるアイルランドと国境を接しているための便宜的な措置である。それがどう影響するかわからない。離脱した当初、一時的には混乱したようだが、中期的には、北アイルランドの住民にはラッキーな面も残されているような気もする。うまく使い分けすればいいのだから。
それはさておき、「ベルファスト」を観てきた。ことしのアカデミー作品賞にノミネートされている。で、急遽、新百合ヶ丘のイオンシネマでも上映することになった。
監督はケネス・プラナー。同監督の「ナイル殺人事件」は先だって観たばかりである。脚本も担当。プラナーの半自伝的映画ということだ。
ベルファストは北アイルランドの中心都市である。連邦国だから首都といってもいいのかもしれない。1969年、ベルファスト市街でカソリック住民による暴動が起きた。プロテスタント系が多く住む街への襲撃だった。平穏だった街にはバリケードが築かれ、両者の対立は激しくなっていった。
バディ(ジュード・ビル)は9歳。ふつうのやんちゃで純真な少年だったが、騒動に巻き込まれていくことになる。それでも好意をいだく女の子に近づいたり、映画を楽しんだりしている。父親は北アイルランドではいい仕事がないと、ロンドンへの移住を考えている。母親はそれに反対。近所の人や親類の人と離れるのは嫌だと言う。アイルランド訛りだとロンドンでは馬鹿にされる。
映画ファンにはなつかしいシーンがいくつもある。映画はモノクロだが、バディが観る映画は一部カラーになっている。ラクエル・ウェルチ、ジョン・ウエイン、ゲーリー・クーパー、グレース・ケリーなどがちらりと映る。
とりわけ「真昼の決闘」の主題歌が効果的につかわれている。「ハイ・ヌーン」である。この曲、私は歌える。作曲はディミトリー・ティオムキン。
カソリック系とプロテスタント系の住民が対決するシーンではこの歌が高らかに流れる。感動的と思うのは、たぶん高齢の男だけかもしれないが。
ということで心地よい映画である。バディ少年は「ニューシネマ・パラダイス」のトトに似ている。映画を流れる雰囲気はケン・ローチの作風と通じている。
バディの祖父母役が光る。祖母はデュディ・デンチが演じている。祖父は警句に通じ、ユーモアを解する。「答えがひとつなら、紛争など起きない」というせりふが印象的。
米アカデミー賞がまもなく決まる。「ドライブ・マイ・カー」より「ベルファスト」の方がおもしろいけど、作品賞は、観ていないのだが、なんとなく「パワー・オブ・ザ・ドッグ」がとるような気がする。気がするだけであるが。
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