「ナイル殺人事件」
アガサ・クリスティの小説はそれほど読んでいない。若いころ、何冊か読んだきりである。
「アクロイド殺人事件」は読んでいる。マージャンの場面がある。へぇー、西欧でもマージャンをやるんだという印象が残っているぐらいで、あとは記憶がとんでいる。なぜ読まなくなったかという確たる理由は思い当たらない。アメリカのハードボイルドを重点的に読むようになったからだろう。自然とクリスティから遠ざかっていった。
「ナイル殺人事件」を観てきた。もちろんクリスティの原作は読んでいない。ポアロものである。予告編を観て面白そうと思い、映画館に足を運んだ。
冒頭は第一次大戦の塹壕シーンである。以前も書いたが、塹壕シーンの映画はこのところたくさんある。ポアロは爆弾で顔を負傷する。傷痕を隠すため髭を生やした。これが意味あるシーンかというと、そんなことはない。いらないシーンだが(ポアロの妻との出会いがあるからまったく関係ないわけではないけれど)、それだけ金をかけて製作したんだってことを観客にわからせようとしているのかもしれない。
ナイル川を遊覧する豪華客船での事件。新婚旅行の夫婦に、夫の元婚約者が同行する。新婦の友人でもある。そんなことあるのかねえと多少疑問に思う。何人ものが同行しており、ポアロもいる。人物の相関関係が込み入っていてよくわからない。原作を読んでいないせいかもしれない。殺人の方法、アリバイ工作、証拠隠滅は古典的というか古くさく感じる。欲望や嫉妬が入り混じるのも同様。火曜サスペンス的テレビドラマに馴染んでいるせいかもしれない。
みどころはエジプトの遺跡である。それを眺めるだけでもこの映画を観る価値がある。アブ・シンベル神殿でのシーン。あれはどうやって撮影したのか。世界的遺跡での撮影は許されない。おそらく巨大なセットをつくったのだろう。金をかけている。
ということで、「ウエスト・サイド・ストーリー」や「シラノ」ほどには楽しめなかった。
ラストで黒人女性が歌うシーンがある。スタンド・バイ・ミー。有名なB・E・キングの曲ではない。黒人霊歌、ゴスペルの方ね。やや飛躍するが、21世紀の映画だということをあらわしている。
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