飛脚
江戸に「十七夜」という飛脚屋があった。十七夜とは満月(十五夜)の翌々日。この夜の月を「立待月」という。立ち待つ月であるが、これを「たちまち着く」としゃれたのが名前の由来である。
信書や小荷物を運ぶのが飛脚であり、明治になり郵便制度ができるまでは足で稼ぐメッセンジャーであった。時代劇にもしばしば登場する。かなりの長距離を走った。
麻生区の戦前の暮らしを記録した郷土史にこの飛脚が登場する。電話や電報がない時代、緊急の伝達は足を頼りにするしかない。死者が出ると、通夜告別式を親戚縁者にすばやく伝える必要がある。葬式は地親類、講中が総出で手伝うが、親戚縁者に日取りを伝えるのも地親類などの役目である。嫁さんの実家などに伝えにいく。これを、飛脚と呼んでいる。職業飛脚ではない。
相手先に「飛脚できました」と葬式の日取りなどを伝える。相手は白米を炊いて飛脚をねぎらう。ふだんは麦飯しか食べない人にとって銀シャリはごちそうであった。むかしの村は、そうした相互扶助のネットワークの中で暮らしてきた。
今はネット社会であり、電話や車もある。伝えるだけなら簡単である。でも、荷物はそういうわけにはいかない。昔の飛脚にちかいのはバイク便だ。ウーバーイーツもそのひとつである。
そのうちドローン便があたりまえになるかもしれない。脚が羽(翼)になる。
国語辞典を引いてみた。新明解国語辞典(第八版)。
江戸時代の飛脚の意味のほか、「昔、急用を遠くに知らせるために送った使い」とある。へー、そうだったのか。知らなかった。
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