フィンランドの決断
フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を正式に表明した。これまで、西側との関係を進展させつつ、ロシア(ソ連)からの信頼を得るという綱渡り的というか中立的立場をとってきた。その国家戦略を大幅に変更させることになる。
フィンランドとソ連との関係について、ジャレド・ダイアモンドは『危機と人類』(上)で、かなり紙面を割いて解説している。その部分をあらためて読み直してみた。
フィンランドは帝政ロシア時代はその属国であった。ソ連誕生を機に独立したが、ソ連はフィンランドに侵攻し、カレリア地方の占拠のほかソ連軍の基地を置くよう要求した。フィンランドの兵士は、白い防寒具にスキーを履いてゲリラ的な戦法で戦った。ソ連軍はこれに手こずったが、戦力は違いすぎる。多くの犠牲を払い、結局は国土の十分の一を割譲するなどの不利な講和を結ぶこととなった。
大戦後は、ソ連を怒らせないよう、信頼を得られるように振る舞った。ソ連と良好な関係を築きつつ西欧との交易で経済を発展させるという国策である。ソ連としても不都合な反ソ的態度を示さない限り、フィンランドの西側との交易は好都合であり、占拠などの圧力をかけるのは得策ではないと感じていた。このあたりのソ連(ロシア)を刺激しないようなフィンランド首脳の外交は涙ぐましいものがある。このあたりが『危機と人類』のキモである。
今回のウクライナ侵攻により、ロシアの意図が明らかになった。NATOに対抗するための軍事拠点なり緩衝地帯なりがフィンランドにも必須だとロシアは考えている。ならば、かつてのようにカレリアなどに侵攻するおそれがある。中立的立場では、いつ侵攻されるかもしれない。NATOに加盟した方がよいとフィンランド政府は考えたわけである。
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟にはトルコは賛成していないので、どうなるかはわからないけれど、フィンランドとスウェーデンの決意は変わらないだろう。
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