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2022年6月 9日 (木)

 「ベルイマン島にて」

 アートセンターで「ベルイマン島にて」を観てきた。ベルイマンとはイングマール・ベルイマンのこと。20世紀を代表するスウェーデンの映画監督である。ベルイマン島とはフォーレ島というのが正式名称だが、ベルイマン監督がここでいくつかの作品の撮影をし、晩年まで住んでいたことからその名がつけられた。いわばベルイマンの聖地であり、観光名所にもなっている。記念館があり、サファリと称したベルイマンモニュメント巡りもある。それがなければ、ただのひなびた島である。

 その島にトニーとクリスの夫婦がやってくる。ふたりとも映画監督で、ここで次作の脚本を書こうとしている。

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 ベルイマン監督作品は、前期のものはほとんど観ている。後期のものはとびとびといったところ。後半の作品は難解さが増し、ついていけなと感じるようになったからだ。観ても記憶に残らない。

 わたしの好みでいうと「第七の封印」をベストワンに挙げたい。難解と言えば難解なのだが、白黒のコントラストがすばらしい映像が印象に残る。死神とのやりとりのシーンなど北欧の神秘性を感じさせる。「野いちご」の冒頭も強烈な印象が残っている。

 映画に戻ると、二人の島での日々が描かれる。ベルイマンゆかりの地を訪ねたり、トニーはイベントで講演もする。クリスは脚本に取り組むのだが、どうラストを描いたらいいのかで筆が止まってしまう。

 二人のほかに別の若い女性が登場する。あらたな人物かと思いきや、これがクリスが執筆している脚本の映像なのだ。ああ、劇中劇になっているのかと途中で気がつく。自身の経験と重ね合わせたストーリーなのだ。それで、結末に迷っているわけだ。

 あらすじを追うのはここまでにして、ベルイマンに戻る。ベルイマンが描きたかったものはなんだろうと映画を観ながらいくつかの思いが浮かんできた。

 ベルイマンは生涯5回結婚している。多くの子をなしている。結婚、離婚、再婚、離婚、再々婚を繰り返した。家族的なつながりを求めながらも、孤独を求めた人生だったといえる。スウェーデン人の気質に自立、孤立、冷厳といったものがある。イタリア人が母親を中心にしたファミリーの結束を大切にするのとは逆になる。これまで観てきたスウェーデン映画とイタリア映画からのイメージだけなのだが、クールとか孤独を好むといった姿をスウェーデンに感じる。長く暗い冬に耐えるといったライフスタイルから抱く先入観かもしれない。ちらっとそんなことが浮かんだ。

 若い人は、イングマール・ベルイマンを知らない。ネットでもなんでもいいからベルイマン作品を観てもらいたい。50年以上前の、初期の作品がお勧めだ。

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