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2022年6月14日 (火)

「はい、泳げません」

 ノンフィクション作家の高橋秀実の文章はおもしろい。対象に鋭く切り込むようなことはしない。ちょっと視点をずらし、ゆるく見つめる。そのまなざしがやわらかい。ユーモアもある。これまで何冊も読んだ。

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  封切になった映画「はい、泳げません」を観てきた。原作は高橋秀実の同名の『はい、泳げません』。実は、この原作を読んでいない。だから、どんなストーリーなのかわからない。原作は小説ではないのだから、映画はずいぶんちがったものになっているに違いない。

 大学で哲学を教える小鳥遊(長谷川博己。小鳥遊はタカナシと読む。難読名字のひとつ)は泳げない。トラウマがあって水と無縁でいたいと思っている。ところがひょんなことで水泳教室に通うことになる。静香コーチ(綾瀬はるか)のもと、まず水に顔をつけることから水に慣れていく。

 息子を川で死なせてしまったことがトラウマとなり、妻とも離婚することになった。静香コートにもトラウマがある。交通事故により、車が走っている道路は心静かに歩くことができなくなっている。プールの中ではそれを忘れることができる。まさに水を得た魚になれる。

 といった設定で、水泳を通じで人生をリスタートしていくのだが、てっきり小鳥遊先生と静香コーチは結ばれると思いきやそうはならないところがおもしろい。詳しくは言えない。

 ゆるさがいい。哲学者の堅さが次第にほぐれていく。ばかばかしさが愉快なのだ。

 肩に力が入ると筋肉は柔らかさを失う。息を吐かないと吸うことはできない。人生もそんなものさという原作者の声が聞こえてくる。

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