かつてアメリカ映画は、父親を中心にした強い絆で結ばれた家族を描いてきた。西部劇の多くがそうだった。いつしか父親は弱体化していった。戦後、あるいはベトナム戦争後、強い父親が描かれることはほんどなくなった。変わって、家族の崩壊をテーマにするものが大半を占めるようになった。
現実もそうなのであろう。宗教団体が家庭の大切さをうったえても、親がそうでありたいと願っても、絆は弱体化していく。絆でもって縛りつけようとするのは所詮あがきであろう。

「フラッグ・デイ 父を想う日」をアートセンターで観てきた。監督・主演はショーン・ペン。エキセントリックな役柄が多かった。この映画では、弱い、ダメ親役である。娘のディラン・ペンも娘役で出演している。娘の視点で描かれているから、娘の方が主役といえる。
1980年代、4人家族だった家庭は崩壊する。国旗制定記念日である6月4日に生まれたジョン(ショーン・ペン)は、特別に祝福され、人生の成功者になると信じていた。裕福で温かい家庭を夢みていたが、現実はそううまくはいかない。成功者になる才覚などなかった。だらしなさを隠し、虚勢で生きてきた。あげくは家族の崩壊、妻とは別れて暮らすことになる。
ムリして挽回に努めるようとするが、いきつく先は犯罪。強盗で15年の刑を食らう。娘も父親を思っているが、父親のことは隠して大学に通う。
で、これ以上はネタバレになるのでやめておくつもりだが、チラシには「父はアメリカ最大級の贋札事件の犯人だった」とある。それって、書かない方がいいんじゃないか。
実話をベースにした映画だから、アメリカ人ならこの事件を知っている。で、こういうコピーになる。でも、日本人のほとんどは事件のことを知らないのだから、伏せておいた方がよかった。
ショーン・ペンのダメオヤジぶりが秀逸である。この手の犯罪者は饒舌である。言い訳が得意。父親の責任(レスポンティビリディ)を何度も語るが、むなしい。そのあたりの演技がうまい。おちぶれた感じもわるくない。一方、娘の抑えた演技もよい。父を想う気持ちが伝わってくる。
弱い父親であることを自然にさらけだしている男性にお勧め。弱くていいんだ。強い父親を目指している人にはさらにお薦め。ムリに虚勢を張ることはない。
わたしは前者の方だろうな。
ついでのひとこと
ショ―ン・ペンの役どころ、ボロボロおやじ。日本なら渋川清彦あたりの役回りだな。