談笑独演会
百合ヶ丘の「轍」というコーヒーショップというかバーで落語会が開かれた。演者は立川談笑である。
会場は、当初、麻生市民館の予定だった。1000人収容できる大ホールである。ダイレクトメールで案内がきて、さっそくチケットを買ったのだが、しばらくして会場が変更になったとの手紙がきた。チケットの売れ行きが芳しくないので会場を変更するとのことだった。
よほどの人気噺家でないと1000人の席は埋まらないだろうと危惧していた。チラシも大してまいてない。案の上であった。
ふつうの小さな洋風居酒屋。客数は30人ぐらい。1000から30に。都心から離れると、こんなものか。「笑点」に出てないもんな。
立川談笑は談志の弟子の四天王の一人。本寸法ではなく、ちょっと外して改作を売り物にしている。「シャブ浜」「ジーンズ屋ようこたん」「イラサリマケー」など改作の名作と言われるものがいくつもある。熱狂的なファンがいるが、それは限られる。テレビにはときどきでているが、レギュラーでないと人気は広がらない。アタシは大ファンで、毎月のように談笑を聴いていた時期がある。
さて、本日の演目。
時そば
千早振る
文七元結
いずれもポピュラーな噺である。「千早振る」はオーソドックスに演じたが、トリネタの「文七元結」は改作魂の籠もった噺となった。
「文七元結」の主人公左官の長兵衛には一人娘のお久がいるが、実は長男の長吉がいたという設定に変えている。長兵衛は腕のいい左官職人だが、博打にのめり込む。唐突である。のめり込むには理由があるはずだが、本来の物語ではわからない。
その穴を談笑は埋める。長兵衛には息子・長吉がいた。跡継ぎにしようとしていた長吉を死なせてしまった。長兵衛は嘆き、仕事が手に着かなくなる。それで、博打におぼれていくこととした。この方が自然だというのが談笑の了見である。
この改作のネタおろしをアタシは聴いている。何年も前のことだ。北沢タウンホールだった。評論家の広瀬和生さんのリクエストに応じた改作である。それからも調整して現在に至っている。今回もオチを変えている。ふつうのオチ(その後、文七とお久が結婚して・・といった後日談)のあと、文七とお久に子が産まれて、といった後日談を付け加えている。
窮屈な高座での熱演であった。3時間近く俄かづくりの高座(写真がそれ。店主は自転車とジャズが好きのようである)に座り続けた。前座による開口一番は無く、中入り(トイレタイム)も足を崩して高座でしゃべり続けた。サービス精神満点の落語会であった。
客も窮屈だったが、アタシもほかの客も満足した。
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