『排除の現象学』 イエスの方舟
有隣堂の新刊平台に『排除の現象学』(赤坂憲雄著)が並べられていた。
奥付あたりを開くと、4回目の出版だと書かれている。1986年に刊行され、文庫としては二度目である。40年近く前の社会評論集。ちと古くさい感じがしないでもないが、その古さに耐えうるだけの現代性があるということだろう。
何編か読んだ。たしかに古くさいが、それはとばして「イエスの方舟」を扱った章が興味深かった。昨今の宗教騒動(統一協会とかエホバの証人)と重ねることができる。
「イエスの方舟」といっても若い人は知らないかも知らないかもしれない。千石イエスを代表とする教団が若い女性を引き込んだということで大騒動となった。マスコミは邪教、人さらいのような団体だと追及した。娘を返せというキャンペーンを張った。しかし、調べてみると実体はそれほど邪悪なグループではなかった。
イエスの方舟は、家族を抑圧装置と見なす。統一協会やエホバの証人は家族の絆を大切にする、子供の躾こそ家庭安定の基本とする。真反対である。
もしイエスの方舟のような家族の拘束を否定する組織があれば、宗教二世が飛び込む駆け込み寺というかアジール(避難所)になったかもしれないなどと想像してしまう。
先週だったか、トー横で少女たちが何人も補導されるというニュースがあった。彼女たちは家庭が息苦しくて逃げ出した。家庭が諸悪の根元なっているかもしれな。説得して家族の元に返しても解決にならないかもしれない。
そんなことを考えながら本編を読んだ。一部大衆は正義を気どって弱者を排除しようとする。マスコミも排除を煽る。衆愚である。
本書のタイトルに現象学とあるが、哲学的な意味合いはない。現象学は出来事研究ぐらいの意味と考えてよい。
読んだのは半分ぐらい。続きの所感はあらためて。
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