「ヴィレッジ」
ひんやりした日が続いている。サクラの頃なら花冷えというのだが、5月も近づいた頃はなんといえばよいのか。つつじ冷えか。
マフラーを巻くほどではないが、首すじが冷える。しゃれたスカーフは持っていないので、噺家からもらった手ぬぐいを首に巻いて外出している。粋なデザインなんだが、しょせん手ぬぐいである。みすぼらしいと感じさせないほどの工夫をして首に巻いている。
藤井道人監督の「ヴィレッジ」を観てきた。藤井監督作品なら安心して観ていられる。しっかりした映画になっているだろう。
大きなゴミ処分場のあるカモン村。ゴミ処分場とは似つかわしくない薪能の伝統がある。村の衰退を避けるため、処分場を誘致したのだろうと容易に理解できる。誘致にあたっては賛成、反対の声があがったことも想像できる。
主人公の優(横浜流星)はその処分場で働いている。かつて父親が起こした事件でいじめをうけたり、親の借金の返済にも追われている。絶望的な状況だが、幼なじみの美咲が(黒木華)が東京から帰ってくることによって、明るい日差しも射してくる。が、現実はそう簡単には好転しない。不法投棄が発覚し、捜査の過程で埋められた男の死体が見つかる。
ヴィレッジというタイトルは、ムラ社会を指している。ムラがムラでいられるうちはよいが、近代化はムラに変革をせまる。ゴミはいやだが、処分場ができれば雇用が増える。ムラには補助金がおりる。処分場の誘致には推進派と反対派が生まれ、ムラを二分化させてきた。
わかりやすい構造で、こうしたテーマは小説や映画で多くとりあげられてきた。手垢のついたテーマでもあるのだが、この映画のおもしろいさは能を介在させたところだろう。演じられる能の一つが「邯鄲」。邯鄲の枕とか邯鄲の夢といった故事に由来するものだ。
ムラの変貌を一炊の夢といってよいかどうかはわからないけれど、それと結びつけようとしたとこがおもしろい。
エンドロールのあとに映像がある。優はどう生きていくのか、余韻を残して。
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