空に星があるように
若い人は荒木一郎を知らない。何人かに訊いたが知らない。中年も知らない人がいる。高齢者は知っている。荒木一郎が活躍したのは50年以上も前だから当然か。昭和は遠くなった。
俳優であり歌手。作詞作曲し、自ら歌った「空に星があるように」「今夜は踊ろう」そして「いとしのマックス」などは大ヒットした。テレビドラマや映画にも出た。大島渚の「日本春歌考」では主役を演じた。昭和43年(1968年)の芸能界は荒木一色だった。
トラブルやスキャンダルで騒がれることもあったが、それも芸のうちぐらいの意気込みで乗り越えてきた。
その荒木一郎の自伝小説『空に星があるように 小説荒木一郎』を読んだ。500ページを超す大著である。
青学高校時代は、ほとんど勉強せず、ジャズ喫茶に入り浸り、遊んだ。母親が俳優だったこともあり、テレビにも出た。ひょうきんな役やちょっと世をすねたような役が多かった。個性的なキャラはドラマには必要だったようで、高校卒業後も俳優としてドラマへのオファーが続いた。
多才であり、カードマジックが得意だった。将棋や麻雀も強かった。才能がほとばしっていた。
当然、女にもてた。榊ひろみと結婚した。が、家庭におさまることはなかった。
小説にはそのあたりのことが書かれている。小説だから虚実織り交ぜてということだろうが、どこまでが事実かどうかはわからない。かっこいい姿が描かれるわけだから、読者は気分よく読める。
荒木一郎はわたしより三つ上。まもなく80になる。どんな爺さんになっているか。かっこつけたダンディな姿を想像する。
わたしがよく知っている人が登場する。結構活躍する。ああ、そうだったのかと驚く。誰だかは言わないでおく。友人には、立ち読みでもよいから読めと伝えた。
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