菊之丞 たっぷり二席
古今亭志ん生没後五十年の追善公演が末広亭の9月中席で行われる。ついでだから先代金原亭馬生没後四十年、古今亭志ん朝二十三回忌、先代古今亭園菊十三回忌も一緒に追善する。さらに五街道雲助の人間国宝認定も祝う。てんこ盛りである。
こうも詰め込むと一人一人は印象は薄れる。それぞれ個別にやった方がいいのではないかと思う。
古今亭菊之丞の独演会(生田寄席)に行ってきた。十三回忌の園菊の弟子である。
菊之丞は50歳になった。もうベテランと言ってよい。本寸法の芸。とりわけ色っぽい演目が似合う。都心では「五十の手習」と題する勉強会を定期的に開いている。
今回の演目は「唐茄子屋政談」と「寝床」。いずれも大ネタと言ってよい。それをたっぷり演じた。
寄席では、たっぷり! という掛け声がかかる。時間を掛けてやってくれという声援なのだろうが、実のところよくわからない。細部まできちんとやってくれという意味と理解している。
「寝床」は義太夫大好きの旦那の噺である。下手でとても聴けるようなシロモノではない。が、周りはそれを言えない。みな理由あげて義太夫の会を欠席しようとする。旦那は機嫌をそこね、暴挙に出る。困った店の者や店子はいやいや義太夫を聴くことで旦那の機嫌を治そうとする。
その機嫌を治していくあたりの旦那の様子がおもしろい。なだめのことばで、旦那は次第にやる気になっていく。ここを、たっぷりやった。会場は爆笑となった。ここあたりを説明するのは難しい。実際に聴いてもらうしかない。
「唐茄子屋政談」もたっぷりやった。若旦那が勘当されてぼろぼろになる。叔父さんが救いの手を出し、棒手振りの仕事を与えられる。ここまでをはしょる噺家が多いのだが、菊之丞はたっぷり時間をかけてやった。
ということで、まさにたっぷりの会であった。
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