格差は広がる
トマ・ピケティの『21世紀の資本』がベストセラーになったのはいまから10年ほど前のことである。
内容をひとことでいえば、資本収益率は経済成長率より大きい、富は給与生活者より資産を有する者(資本家)に多く蓄積されていく、ということである。わかりやすい。こうして格差は広がっていく。
長い年表をじっと眺めていると、格差拡大の傾向に反して格差が縮まる時期があるのに気がつく。戦争や大災害があった時だとわかる。
金持ちの資産が失われる。さらに政策として、資産税や累進課税が強化されることもある。みな平等とはいわないまでも、格差は縮まる。終戦直後の日本がそうだった。
ここまでは過去のこと。近年は、戦争や災害があっても格差は縮まらない。むしろさらに格差は広がっている。99対1といった議論、99パーサセントの富がわずかな人に偏在するようになっているとの見解である。
なぜか、ひとことで言うのは難しいが、背景にはAIの発展がある。AIを駆使したグローバル企業は稼ぎまくり、さらに税制網をくぐりぬける枠組みを構築している。こうして大富豪が誕生する。
わかりやすい例をあげると、ハリウッドでの脚本家や俳優のストライキである。再上映やDVD化によって利益は広く再配分されていたのだが、ネット上映やAIを駆使した映画製作により、それがなくなったり、縮小した。稼いだ富は製作トップに集中することになった。
ショック・ドクトリンもそのひとつ。今年、ショック・ドクトリンが話題になった。本は読んでいないのだが、NHKの「100分で名著」で知った。惨事に乗じて、国家的な仕組みをつくってしまう。国民が知らないうちに、管理体制の強化とともに儲けの仕組みをつくってしまう。コロナに乗じて一部の製薬会社は大もうけした。AIにより情報を集約させ、それをメシの種にした。別の表現をすれば、逆ネズミ算的に儲けるしくみをつくったわけである。
AIはうまくつかえば豊かな社会づくりに貢献するが、副作用もめだつ。
ピケティ先生、どうすればいいのでしょうか。
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