「正蔵・喬太郎ガチンコ二人会」
鶴川落語、12月は林家正蔵・柳家喬太郎二人会である。今回で11回となる。配られたリーフレットにこれまでの演目が載っている。全部は聴いていないが、もっとも印象に残っているには第2回(9年前)のものである。
後半、正蔵が「松山鏡」をやった。これをしくじった。鏡を知らない男の噺なのだが、おもわず鏡としゃべってしまった。それに気づいた正蔵(観客も気づいた)は、「えっ、カガミと言っちゃいましたね」とそこからやり直したが、しどろもどろになってオチまで演じた。肩をおとして高座を降りる姿が可愛らしかった。
つづいて喬太郎は高座にあがった。マクラでこのしくじりをネタにするんじゃないかと思ったら、いきなり「寝床」に入った。店の旦那が下手な義太夫の会を開くのだが、だれも聴きたくないという噺である。みんな欠席の理由を次々とあげていく。ここで、喬太郎は「正蔵はどうした?」と訊く。アドリブである。「正蔵は高座をしくじって楽屋で立ち上がれなくなっています」と欠席の理由を述べる。会場は大爆笑となった。抜群の即興芸だ。感心した。記憶に残るに二人会となった。
で、今回の演目。
正 蔵 鼓ヶ滝
喬太郎 野ざらし
喬太郎 えーとここは
正 蔵 ねずみ
「えーとここは」以外はおなじみの古典噺。喬太郎の「えーとここは」は新作。タイトルは後で知った。会社員の部長と部下が商店街のカフェに入って、ここは元なんだっけというやりとりをする。わからない。オムライスの店じゃなかったと議論になる。ふわとろの卵のオムレツか、しっかりした卵焼きでくるんだオムレツか。言い合いとなる。つづいてこのカフェはそば屋ではなかったかと議論がとぶ。コシのあるソバか立ち食いソバか。ケンカ腰で言い合う。たたわいもない会話、昭和男と平成男の世代間対立をおもしろおかしく演じる。喬太郎独特のイルージョン落語である。笑いはいっぱい。にぎやかな噺であった。
さて、二人とも60を過ぎた。からだもガタがきている。正座ができない。正蔵はお尻にマクラをかって座る。喬太郎は釈台、あぐらで座る。
写真は今回のチラシであるが。ずいぶん昔の写真である。正蔵は短髪だから目立たないが、今は年齢相応の顔になっている。喬太郎は髪の毛は真っ白。大ベテランの風貌である。でも、声は若い。
噺家は声が命。その声で長く馬鹿噺を演じてもらいたい。
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