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2024年1月28日 (日)

『鬼の筆』

 日本を代表する映画脚本家と言えば、橋本忍と笠原和夫の二人を挙げたい。人によって好みはあろうが、五人を挙げろといえば二人は間違いなく入る。

『鬼の筆』はその橋本忍の評伝(春日太一がインタビューをまとめたもの)である。サブタイトルは「戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」となっている。

「羅生門」「生きる」「七人の侍」と並べただけで、すごい脚本家なんだとわかる。

 橋本忍には『複眼の映像』という自叙伝がある。これを読んだのは20年近く前のことだ。おもしろかった。主要なところは何度も読み返した。

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 黒澤明監督の三作品は、小國英雄、黒澤明、橋本忍で書いている。それぞれの役割があった。黒澤と橋本がまず書く。小國はじっとしているだけ。できあがった原稿を小國が読み、疑問点をあげたり、いくつか指摘する。小國がダメ出しをすればただちに原稿を破り捨て、黒澤と橋本が書き直す。そんな関係だった。

 のちに、三人にだれがどこまで書いたかを問うと、それぞれ違う答えが返ってくる。記憶にズレがある。真相はわからない。「羅生門」の原作である芥川の「藪の中」と重なる。藪の中なのだ。このあたりは興味をそそる。 

 橋本忍はのちにプロダクションをつくる。「砂の器」「八甲田山」などを製作する。

 橋本作品で印象に残るのは回想シーンである。この回想がうまい。「生きる」では最初の方に通夜のシーンがある。ここで主人公の人となりや行動を明らかにしている。映画の全体像がわかってしまうのだが、観客を引きつけるうまい方法である。著者(春日)は回想シーンを入れることで、観る人を説得してしまう橋本の豪腕さを評価している。

砂の器」では、音楽会と父と子の旅と捜査会議を重ねて映し出す場面がある。主題歌「宿命」が流れる。コンサート、刑事たちの動き、父と子のシーンを重ねて映像にしている。ここが感動的なのだ。日本映画の中でもとりわけ傑出したシーンといえる。この部分を競輪のラスト一周、まくりだと、競輪狂でもある橋本は語っている。競輪ファンならよくわかる。

このシーンは「仁義なき戦い 頂上作戦」のラストに匹敵する。印象に残る。

 挫折についてもふれておかねばならない。「幻の湖」がずっこけたことだ。三時間の大作だが、内容がよくわからない。平坦で退屈。歴史的な不入りとなった。大いなる挫折であった。しかし、その後も、脚本を映画化している。

と、ここまで、書いたところで次の予定を思い出した。書き足したいことがあるが、やめておく。

 ついでのひとこと

 紙切りの林家正楽さんが亡くなった。紙切りといえばこの人だった。76歳。アタシよりずっと上かと思っていたら同い歳だった。

 正楽の名跡を継ぐのは林家二楽だろう。そんなに先ではない。

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