「語る映画 奈々福・大福 浪曲二人会」
映画を落語にして演じることはよくある。今回は浪曲で。玉川奈々福・玉川大福の二人会をアートセンター聴いてきた。二人は浪曲界の若手人気スターである。若手ではなくて中堅か。浪曲ブームを支えている。
今回の演目
大福 男はつらいよ 寅次郎相合い傘
奈々福 平成狸合戦ポンポコ
2時間近い映画を30分程度にぎゅっと縮める。どこをカットしてどうつなげるかという編集作業が出来の良しあしを決める。たくさんの登場人物を演じ分けなければならないからそれなりの技量もいる。聴き手の想像力(聴き手は映画を観ているとして)に依存するところはあるとしても、けっこう難しいし、また聴きどころでもある。
寅さんシリーズは50作もある。「相合い傘」と聞いてもさて、どんなあ映画だったか思い出せない。リリー(浅丘ルリ子)がマドンナになる。しかし、リリーのものは何作かある。さて、どんなだったかと思うのだが、それはどうでもよい。聴き始めれば思い出す。メロンのアレだった。
メロン騒動は寅さんシリーズの中でも屈指の名場面である。メロンの一切れをめぐって寅さんがいじける。渥美清のひがみと怒りの演技に誰もが大笑いした。この場面は何度観ても可笑しい。大福は、もちろん浪曲らしく大仰に演じた。
「平成狸合戦ポンポコ」は高畑勲監督作品。多摩丘陵の自然が都市化で失われていく姿を描いたアニメである。奈々福は笑いをとりながら絶叫調で演じた。ラストの盛り上げかたがすごかった。うまい切り取り(編集)だった。タヌキはわずかだがタヌキとして生き延び、化け方のうまいタヌキは人間に変身して生きている。
奈々福はいつ聴いても声に張りがある。
アフタートーク。
大福の寅さんシリーズは15作あるのだそうだ。へーそんなにやっているのか。落語の立川志らくは、全作品を落語にしたとの話を聞いたことがある。それに追いつかなくてもよい。多いだけが能じゃない。全部やらなくてもいいから、厳選してブラッシュアップしたものをまた聴きたい。
奈々福にはおなじ高畑監督の「かぐや姫の物語」をというリクエストが多いのだそうだ。あれはできないと語っている。あのスピード感とラストの映像はほかに置き換えるのは困難である。無理をしてやることもないと思う。
ついでのひとこと
今回の曲師(三味線弾き)は若かった。曲師というと高齢者が多い。豊子師匠とか祐子師匠。今回は初々しいお嬢さん。合いの手もかわいい。三味線だけでなく、曲師の姿や掛け声も芸のうち。よかった。100歳を過ぎた祐子師匠も若々しいけど。
「落語」カテゴリの記事
- 「ザ・ニュースペーパー」(2025.01.26)
- 「八起寄席」(2025.01.22)
- 生田寄席 柳家小せん(2025.01.16)
- 正蔵・喬太郎二人会(2024.12.16)
- 「八起寄席」(2024.11.20)
コメント