忌憚のない意見
一昨日の午後から雪になった。久しぶりに雪道を歩いた。
老人のように、小股でゆっくり歩いた。たっぷり老人なのだが。
傘に雪が積もった。
雪の句が浮かんだ。自作ではなく其角の有名な句。
わが雪と思へば軽し笠の上
話はかわって、昔のことを思い出した。
社内会議の折、忌憚のない意見をお願いしますとの司会者からあいさつがあった。
それほど鋭くはないけれど批判の意見を述べた。あとで、あれは言い過ぎだよと先輩から言われた。20代のころだ。
「忌憚のない意見を言えといわれたので・・・」と答えたら、アハハはと笑われた。
忌憚のない意見をと言われてもなんでも言ってというわけじゃない、忌憚のないとはタテマエ、儀礼のことばにすぎない。そんなことはわかっている。ならば使うよなと言いたかった。
以後、しばしば忌憚のない、を聞く。ああ、本当のことを言うなよ、遠慮せよ、ということばと理解するようにしている。それにしても空疎な表現だ。
悪いようにはしないとひとを説得することがある。
悪いようにしないと言って、良いようにしたためしはない。
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