「美と殺戮のすべて」
オピオイドという薬がある。知らなかった。
オピオイドを扱った映画「美と殺戮のすべて」のチラシにはこうある。要約。
ケシから抽出した成分やその化合物から生成された医療用鎮痛剤である。鎮痛効果のほか多幸感や抗不安作用がある。アメリカでは、1995年、オピオイド系の鎮痛剤「オキシコンチン」が発売された。常習性が低く、安全ということだったが、主に疼痛治療に大量に処方されるようになった。2000年頃から依存症や過剰摂取による中毒死が急増した。アメリカでは過去20年間に50万人以上が死亡している。
オピオイドは、モルヒネの一種とみなしてよいのか。
ドキュメンタリー映画である。アートセンターで観てきた。主にサブカルチャーを撮ってきた写真家ナン・ゴールデンの活動を描いている。前半は主に彼女の写真が映し出される。ゲイとかパンクというジャンル。
後半は、主にオキシコンチンを製造販売するパーデュー・ファーマ社への抗議活動となる。経営者であるサックラー家は莫大な利益をあげており、世界の美術館に多額の寄付をしていた。
2018年、オキシコンチンに反対するゴールデンらのグループはメトロポリタン美術館を訪れ、鎮痛剤の空の容器を投げ込んで、サックラーからの寄付を受け取るな、との抗議活動を行った。
映画は、ナン・ゴールデンの活動記録である。なぜ彼女がこの活動をリードしていったかが描かれる。
製薬会社は当初、彼女らの活動を無視していた。薬害が明らかにされ、抗議活動が広がっていくと、いくつもの美術館は寄付を断るようになった。さらに、多くの訴訟も起こされており、集団訴訟については、会社は有罪を認め、多額の和解金を支払うことになった。
ということである。数年前の話であるが、まったく「オピオイド薬害」を知らなかった。
日本ではどうかというと、承認されている。きちんと管理され、販売されているということで薬害の報告はないそうだ。だから、知られていない。そのせいか、観客も少なかった。
ひとことつけ加えると、「美と殺戮のすべて」というタイトルから、映画の内容は連想できない。
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