無料ブログはココログ

« 『歳月』 | トップページ | 戦禍の臭い 『戦争語彙集』 »

2024年5月31日 (金)

「青春」 ワン・ビン

 アートセンターでワン・ビン監督の「青春」を観てきた。

 ワン・ビンはドキュメンタリーの巨匠といわれている。いくつもの名作をてがけてきた。映画は観たいが、ちょっと難点がある。尺が長い。5時間を超すものもある。今回の「青春」は3時間35分。

 このくらい長いと問題は尿意である。出口近くの通路側の席を選んだ。もちろん水分摂取は控えて。

240525111945726

 揚子江下流の工業地帯、子供服の縫製工場で働く若者たちの姿を描いている。電動ミシンのモーター音がダッダッダッとうるさいほど響く。ミシンの糸は切らず、次々と縫う。あとでたたむときに縫い糸をカットする。手際がよい。働き手は20前後の若い男女。みな、安徽省などからの出稼ぎである。

  給料は安い。しばしば賃上げを社長(縫製工場は小規模)に申し入れるが、すんなり賃金が上がるわけではない。寮生活や恋愛模様も描かれる。ワン・ビン初めての劇映画と聞いていたが、ドキュメンタリー映画といわれたら、そうかと思う。それほど日常が淡々と描かれている。

 ひたすらミシンに向かう。そのシーンが長い。モーター音がうるさいと感じたが、途中からはそれが日常だと馴れてしまう。日本の想田監督に「牡蠣工場」というドキュメンタリーがある。牡蠣を剥くシーンが延々と続く。あれを思い出した。船酔いのような気分になる。モーター音はマシンガンのようでもあるが、馴れると頭がしびれるようになる。心地よく響く。不思議なことだ。

 3時間半、途中でトイレに駆け込むことはなかった。モーターの響きが尿意を忘れさせた。映画に起承転結はない。ワン・ビン流の描き方はこうである。

  そして、たぶん、今も、ミシンは音を立てて回っているだろう。

 

« 『歳月』 | トップページ | 戦禍の臭い 『戦争語彙集』 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『歳月』 | トップページ | 戦禍の臭い 『戦争語彙集』 »