「碁盤斬り」
「碁盤斬り」と聞いて、ああ、あれねと、落語通ならわかる。「柳田格之進」である。
落語の「柳田格之進」は30分ほどの噺。それを2時間ほどの映画にするなら、サイドストーリーを入れ込むなどの肉付けが要る。どんな工夫をしているのか興味がわく。イオンシネマで観てきた。
主演は草薙剛。監督は白石和彌。好きな監督だ。
柳田格之進(草薙)は藩での内紛の責任をとって浪々の身となった。落語ではそのあたりのいきさつは省いている。囲碁が大好きで碁会所で大店の旦那(國村隼)と知り合う。こちらも大の碁好き。旦那の家に招かれて碁を打つようになる。ある日、番頭が集金した金を旦那に手渡すが、金のありかが不明となる。その場には格之進がいた。さては格之進が盗ったにちがいないと番頭は旦那にうったえるが、旦那は詮索するなと答える。番頭は納得せず、格之進の住まいに出向いて、金がなくなったことを伝える。暗に格之進が盗ったのではないかと問い。金が出てこなければ、奉行所に届けを出すと告げる。
奉行所が絡むとやっかいなことになる。格之進は50両を用立てると答える。と、答えたものの金はない。仕方なく、娘を吉原に売ることにする。50両を工面した格之進は、もし金が出てきたら、番頭と旦那の首を斬ると宣告して金を渡す。
映画では、落語に登場しない手代(中川大志)が格之進宅に行くことになる。ここが違う。
さらに吉原の女将も登場する。これが「文七元結」に出てくる佐野槌の女将とそっくり。なるほど「文七元結」のエピソードをくっつけることで人情噺に仕立てている。暮れまでは店には出さないが、返済できなければ年明けには店に出すと女将は言って金を出す。女将を演じるのは小泉今日子。ここまでが前半。
囲碁のシーンが長い。すりきれた碁石が印象的。たぶん江戸時代の碁石はこんなんだったのだろう。
後半には藩でのいざこざ(格之進は冤罪で藩を辞すことになったいきさつ) が描かれる。敵であった侍(斎藤工)が登場する。この侍も碁が強い。格之進との対局となる。そして、ついに乱闘。この乱闘シーンがすさまじい。迫力がある。この映画のみどころのひとつであり、白石監督の本領発揮といった場面である。
これ以上書くとネタバレになるのでやめておく。なるほど、うまい脚本にしていると思うが、ちょっと納得できない点もある。まあ、それは致命的なものではない。格之進の娘役の清原果耶がういういしい。
肝心なことを書き忘れていた。落語のオやは碁盤斬りになるが、碁盤斬りをやらない噺家もいる。
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