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2024年7月

2024年7月31日 (水)

国語教科書の今

 中学一年の孫娘が来るというので、国語の教科書を見せてほしいと連絡した。

 もってきた教科書はずしりと重い。かなりのページ数。ぱらぱらめくっただけだが、けっこう充実していることがわかる。中一にしては高難度のものもある。ガイド(解説)も的確。教科書は進化している。私が中学生だったときのものと比較しても詮ないことだが・・・

 最近の作家のものある。瀬尾まいこの短編が入っている。新しい科学の読み物もある。たとえば鈴木俊貴のエッセイ。四十雀の鳴き声を研究したものだ。以前、テレビ番組で観て、驚いた。四十雀が鳴き声で仲間とコミュニケーションを図っている。同じ警戒の鳴き声でも、空のタカと地上のヘビでは声を変えている。仲間はそれを区別できる。そんな最新の研究まで載せている。読解力だけでなく、科学的な好奇心を引き出すような内容になっている。

 孫は、授業は楽しいと言う。そりゃ、けっこうなことだ。

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  折しも、麻生区民館では川崎市が選定した教科書の展示会が開かれている。写真がそれ。ちょっと覗いてみた。時間があればずっといたかったが、国語教科書だけを開いてみた。

 作品が多彩。若い作者もいる。朝井リョウ、瀬尾まいこ(別の教科書にも載っている)。中原中也、谷川俊太郎の詩もある。おなじみの「朝のリレー」は複数の教科書が載せている。そして、池上彰、別役実、向田邦子、魚住りえ・・・。

 中学を卒業するまでにこれらの教科書をじっくり学べば。それで十分じゃないかと思ってしまう。大人も教科書を読んでみたらどうだろうか。

 リスキリングなどと叫ばれているが、まずは最新の教科書を読むという手もある。

 

2024年7月29日 (月)

「国本武春の丹波浪曲道中記」

 国本武春という浪曲師がいた。浪曲界の風雲児といわれた。

 浪曲がうまいのは当然として、新たな浪曲スタイルをつくり人気を博した。10年後20年後の浪曲界をリードしていくものと思われた。しかし、2015年、突然亡くなった。55歳。いかにも若い死であった。

 私はそれほどライブを聴いていない。もっと劇場に行けばよかったと残念に思っている。いまはたまにCDを聞くぐらい。ユーチューブも観ている。武春のうなりは気持ちがよい。

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 渋谷のユーロスペースで、「浪曲で生きる映画祭」が開催された。二日間にわたって浪曲ドキュメンタリーを上映するイベントである。

 そのなかに「国本武春の丹波浪曲道中記」がある。炎天下、それを観るため渋谷に出かけた。

 2008年、丹波に招かれ公演をした。道中、武春の浪曲に対する情熱を饒舌に語る。武春節、炸裂である。本番の演目は丹波にゆかりのある「おさん茂兵衛」。

  浪曲はふつう演者と曲師(三味線)で演じられるが、武春は弾き語りの要領でやる。三味線の腕もすごい。ロックなどをアレンジして浪曲をうなる。今回の演目はそれほどうならない。ロックというよりブルースである。これが心地よいのだ。武春は気持ちよく歌い、観客も気持ちよく聴く。すばらしいライブになっていた。つくづく惜しい浪曲師を失くしてしまったものだ。今はCDかDVDを聴くしかない。

 武春亡き後、浪曲は衰退してしまうと危惧したのだが、それは杞憂だった。奈々福、大福らの若手台頭により盛り返している。けっこうなことだ。

 武春死後も、Eテレでは、うなりやベベンを長く放映していたのを思い出す。

 

2024年7月27日 (土)

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

  アポロ11号が月面に着陸したのは1969年、今から50年以上前のことである。

 宇宙服を着たアームストロング船長等の月面での活動が世界中にリアルタイムで放送された。現場からのテレビ中継。あれには驚いた。今では当たり前のことだが、月からの映像がたちまちのうちに届くなんて、信じられなかった。

 だから、疑いをもつ人もいた。あれはフェイクだと。といったうわさがささやかれた。今なら、かなり拡散したかもしれない。

 その噂ばなしをヒントにした映画が「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」である。イオンシネマで観てきた。

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 ケリー(スカーレット・ヨハンセン)はPRのエキスパート。政府機関の要請でNASAに送り込まれた。アポロ計画はソ連に対抗するための国家事業である。なにがなんでも成功させなければならない。この事業の責任者は、失敗してもいいような策略をケリーに打ち明ける。NASAの基地内に月面を作り、アポロとそっくりの活動を放送するというフェイク計画である。ケリーは計画に疑問を抱きながらもそれを受け入れ、宇宙飛行士らのPR活動につとめる。

  発射責任者のコール(チャニング・テイタム)は当然反発するが、ケリーの説得により、協力することになる。

 で、ここから。すんなりフェイク作戦は進むと思われるが、そうはいかない。猫が邪魔をしたり、紆余曲折がある。このあたりがドタバタ。おバカ撮影監督が笑わせる。全体を通じてギャグと素早いテンポのしゃべりがつづく。いかにもハリウッド的。軽快である。

 タイトルはもちろんあのヒット曲であるが、劇中ではちょっと歌われるだけ。フランク・シナトラの歌声はない。「ムーン・リバー」も出てくるが、これも短い。

「スペースカウボーイ」というイーストウッドの映画があった。そこではフライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンが流れていたような気がするが、どうだったか、自信はない。

2024年7月25日 (木)

 パラアート展

 さきの都知事選では石丸さんが躍進した。マスコミやSNSがもてはやしたこともあり、予想外の大量得票だった。

 選挙後、テレビに登場する姿は確かにさわやかな印象である。若さもある。

 でも、あの人に似ている。兵庫の斎藤知事だ。パワハラ問題で矢面に立たされている斎藤さんを石丸さんと最初見間違えてしまった。姿も、ものの言い様も似ている。ぺらぺらしゃべる。明と暗だけど。

 石丸さんは今後どうするのか、マスコミはあれこれ取り沙汰している。代議士だの知事になるかもしれない。それでいいのだが、何年か後、釈明記者会見に登場するなんてことがないようにと祈る。

 私の予想はけっこう当たるからね。斎藤知事も辞任、だろうね。

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 かわって、パラアート展。新百合のオーパ二階で、「ピカソカレッジ パラアート展」が開催されている。展示品は少なく、トイレ脇だからわかりにくいが、トイレを目指して行けばわかる。

  障碍のある人が社会の一員としてふつうに暮らしていけるよう支援する団体の活動のひとつ。この絵がすばらしい。大胆で生き生きとした筆遣い。写真は、その一枚。絵ハガキにしたもの。ネットで買える。

 

 

 

2024年7月23日 (火)

「ホールドオーバーズ」

 アートセンターで「ホールドオーバーズ」を観てきた。サブタイトルは「置いてけぼりのホリディ」。クリスマス休暇なのに帰省できずに居残となった高校生らを描いている。

  だから、置いてけぼり。この手の映画はいくつも観てきた。大雪でホテルに閉じ込められてしまったとか、帰りたくない事情があって留まるとか。でも、題名は忘れてしまった。俳優も。

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 時代設定は1970年。全寮制の高校。古代史の教師・ハナムは厳格。議員の息子を落第させるなどの理由で校長から意地悪をされる。休暇だが、居残りの生徒の監督を命じられる。高校生のアンガスは問題児だったが、帰省できることになっていた。しかし母親の都合、再婚相手と旅行することになったので帰ってくるな言われ、留まることになった。もうひとりは料理役メアリー。ベトナム戦争で息子を亡くしたばかり。さらにもうひとり、清掃係の黒人男性もいる。

 三人はテーブルであれこれおしゃべりをする。アンガスは母親への腹いせで、当たり散らす。これ以上問題を起こすと退学になってしまうから、ハナムは必死でアンガスをなだめる。

 アンガスは突然、ボストンに行きたいと言う。無理な話だが、それを止めればアンガスは脱走してしまうおそれがある。で、社会視察だと理由をつけて、ハナムは一緒にボストンに向かうことになる。メアリーも妹家族に会いたいとのことで、同行する。

 三人旅の始まり。ここからが面白い。脚本がうまい。それぞれの過去や心の傷が明らかになっていく。アンガスは実の父と会うことになる。ハナムがハーバード大を中退であることがわかる。この先の詳細はネタバレになるのでやめておく。

 それぞれの事情が明らかになっていく過程がよくできている。エンディングも、ハッピーエンドではないけれど、さわやかな気分にしてくれる。上手い。ここ映画はお薦め。

 アメリカの、1970年ごろの雰囲気はこんなものだったか。私が社会人に なった年だ。

2024年7月21日 (日)

鶴川寄席  扇辰・兼好二人会

  梅雨明けすると暑く晴れた日が続く。炎天下を歩くのは避けるようにしているが、外出となるとそうもいかない。直射日光を浴びる腕がじりじりする。5分も歩かないのに汗が噴き出す。

  鶴川寄席に行ってきた。会場のポプリホールは駅のそば。わずかしか歩かないけど、炎天の厳しさを感じる。

 今回は入船亭扇辰三遊亭兼好の二人会。いずれも人気の噺家である。

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 演目

  扇辰  蕎麦の隠居

  兼好  応挙の幽霊

  兼好  一分茶番

  扇辰  匙加減

  馴染みのない演目が多い。これは、扇辰さんの演目が他の人があまりやらないものが多いからかもしれない。

 扇辰さんの「蕎麦の隠居」。そのまえにチラシの写真をご覧いただきたい。扇辰の辰という字が変。辰の上に一本余計な横棒がある。デザイン的には違和感はないが、字としては間違っている。扇一辰になってしまう。扇辰さんはこれにクレーム、苦情を言った。で、本題に入った。蕎麦屋に毎日やってくる客(隠居)が苦情を言うという噺である。いちいち小うるさい。とはいえカスハラほどではない。

 以前「TBS落語研究会」だったか、テレビで聴いたことがある。もちろん扇辰さん。他の人では聴いたことがない。

 トリの「匙加減」は、医者が品川の茶屋で働くお浪に惚れて身請けをする噺である。身請けしたが証文はもらっていなかった。店の強欲おやじはちゃんと身請け金を払えと医者に迫る。もちろん払わない。奉行所に訴えて、お裁きとなる。登場するのはもちろん大岡越前。どのように裁くかといったストーリー。あまり聴かない噺だが、一度だけ聴いたことがある。たぶん同じ扇辰さんだったような気がする。

 人があまりやらないような噺を持ちネタとするのが扇辰師匠である。

 兼好さんは、いつものように明るくにぎやかである。テンポも心地よい。マクラの話題もおもしろい。今回は新札ネタ。新札に描かれた人物画は気むずかしい顔をしている。笑っていたっていいじゃないか。そんな話だった。

一分茶番」は素人芝居の噺。これも「落語研究会」で聴いたような子がする。兼好さんだったかどうかは忘れた。

 登場するのは権助。権助と言えば飯炊きである。その飯炊き権助がしろうと芝居に引っ張りだされる。演目は忠臣蔵の七段目。とうぜんまともな芝居にはならない。どたばたとなる。爆笑もの。こういう噺なら兼好さんである。兼好さんに人情ものは似合わない。

 ということで、暑さを忘れる落語会だった。でも、そとに出ると、まだまだ暑い。汗が噴き出す。まずはビールだな。

2024年7月19日 (金)

「メイ・ディセンバー ゆれる真実」

 成人男性が美少女に恋するのをロリコン(ロリータ・コンプレックス)という。その逆はどう呼べばいいのだろうか。

「JUNE」という雑誌があって、女性による少年愛のエッセイが載っていたとか。ふーん、それなら、少年愛をジュネコンと表現してはとうかと考えてみた。

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 映画「メイ・ディセンバー ゆれる真実」を観てきた。ジュネコン映画と表現してよいかわからないが、ま、それの内といってよいか。

 36歳の女性と13歳の少年が愛し合うのだが、女性グレイシー(ジュリアン・ムーア)は児童レイプの罪、日本だと淫行罪で捕らえられてしまう。グレイシーは獄中で出産する。タイトルのメイ・ディセンバーは、歳の差のこと。5月と12月ほどに離れている。

 それから20年ほどたち、女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)は、グレイシーのもとを訪れる。グレイシーはその少年と結婚し、3人の子を設けていた。グレイシーの家族を題材にした映画がつくられることになり、役作りのための取材だった。なぜ二人は愛しあうようになったのかを探っていく。

 ここまではよいのだが、わからないことがある。端的に言っちゃうと、どっちが近づいたとか誘ったとか真相がわからないのだ。少年、今は夫の気持ちもわからない。ああそれで、サブタイトルを「ゆれる真実」としたのかと、妙に納得してしまう。

 真相などわからない、見方によって違ってくる。そうだとわかっているのだが、観終わって、もやもやしたものが残る。

 それとは関係なかろうが、観客は少なかった。

 ついでのひとこと

 少年から見れば年上の人。演歌を連想する。森進一の「年上の女」。

 だめよ だめだめ つらいのと・・・映画とは関係ないか。

2024年7月17日 (水)

 「八起寄席」 小間物屋政談

 NHKラジオの「小痴楽の楽屋ぞめき」を聴いている。おしゃべり落語番組である。ディープな話題になることもある。今週の「碁盤斬り 柳田格之進」の話はおもしろかった。

碁盤を斬るというオチにつながる最後の場面を噺家がどう演じているかの比較である。志ん生、馬生、志ん朝、一之輔、馬石などの音声を流す。オチがきまっている古典噺でもそれぞれの工夫がある。噺家の料簡というか解釈のこころざしがうかがえた。聴き逃しサービス「ラジル・ラジル」で週末まで聴くことができる。ぜひ、ネットで聴いてもらいたい。

 映画の「碁盤斬る」も工夫がみられる。なるほどと、私は感心して観た。ところが、ラジオに出ていた小痴楽以下三人の噺家は、まだ観ていないとしゃべっていた。

そりゃ、まずいよ。噺家なら、すぐ観に行け!

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  はなしは変わって、八起寄席(相模大野)に行ってきた。

 今回の演者と演目

 立川志の大   初音の鼓

 古今亭文菊   お菊の皿

 林家八楽    紙切り

 三遊亭楽麻呂 小間物屋政談

 個別のコメントは省いて、トリの「小間物屋政談」について。

長講噺。30分に収めるのは難しい(やれないことはないけど)から、通常の寄席ではなかなか聴けない。独演会とか聴講の会で聴いたことがある。

 工夫が凝らされたしゃれた小説のような噺で、オチがおもしろい。なるほど、そうまとめたのかと感心する。

 取り違いの話。死んだはずの小間物屋が長屋に帰ってきて、みんな驚く。女房はすでに再婚してしまっていたのだ。とんでもないと亭主は怒って、奉行所に訴える。裁くのはもちろん南町奉行・大岡越前。結果、八方丸く収まる裁きをする。めでたしめでたし、といったストーリー。

 小間物屋が死んだと勘違いされたのは、箱根の山で追いはぎに遭って大店の旦那に手持ちの着物を与えたことによる。旦那は急死してしまい。身元は不明。着物と持っていた紙切れにより小間物屋が死んだものとされてしまったのだ。

 短編小説のような噺で、こんな小説を読んだことがあるような、ないようなそんな気分になる。

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2024年7月15日 (月)

「お母さんが一緒」

今朝は雨。一瞬雨がやみ、陽が射した。アブラゼミが鳴いた。ことし初めて聞くセミの声。例年より早いか遅いかはわからない。

 

 交流分析(精神分析学)にゲームという考えがある。われわれが連想するゲームではなく、繰り返される気まずいやりとりとでもいったもの。夫婦げんかなどがそれにあたる。

「おまえがわるい」などの悪口を言えば「なに言っているのよ。あんたはねえ、いつもそうなんだから」といったネガティブなやりとりが繰り返される。非生産的であり、結果、気まずい気分になる。当人はそんな会話にするつもりはないのだが、なぜか繰り返してしまう。

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 映画「お母さんが一緒」を観てきた。橋口亮輔の久しぶりの監督作品である。

 母親への誕生日を祝おうと温泉旅館にやってきた三姉妹。楽しい旅行になるはずだったが、長女(江口のりこ)は旅館がかび臭いとケチをつける。旅館を選んだ次女(内田慈)は冗談じゃないと反発する。画面には登場しないが母親は結婚して孫を産んでくれとなにかにつけて娘たちに宣っている。長女は39歳。未婚。次女も三女(古川琴音)も未婚。せっかくの温泉旅行なのに露天風呂でゆったりする暇はない。ときに声を荒らげての口げんかがくりかえされる。いつものパターン。交流分析でいうところのゲームである。

 けんかだから耳障りかというとそうでもない。爆笑的なやりとりもあって客席を笑わせる。ここに三女が結婚したいという男(青山フォール勝ち)が現れる。この男、ちょっとずれている。なぜか険悪になる雰囲気を和らげる。

 どのようなエンディングになるのか。当然、それはカタルシスをともなうような仕掛けになっている。江口のりこの終盤あたりの演技というか表情、目つきが見もの。すごい。このシーンはもう一度観てみたい。

 現実に戻って、気まずいゲームをどう終わらせるか、非生産的であることに気いてもらうにはどうしたらよいか。精神分析医やカウンセラーは考えている。アドバイスもするのだが、そう簡単にはいかない。気づいてもらうヒントはあるのだが・・・、これ以上説明するのはやめておこう。

 ただ、この映画には、今、ゲームをしているんだと気づかせるようなヒントがある。精神分析的に観てみると、さらにおもしろい。

 この映画の登場人物は、アナタに似ている。

 

2024年7月13日 (土)

「フェラーリ」

 イオンシネマで「フェラーリ」を観てきた。アダム・ドライバー主演。「スター・ウォーズ」とか「パターソン」とかが印象に残っている。共演が大女優のペネロペ・クルス。去年観た「コンペティション」の狂気じみた演技がすごかった。ということで、これは観ておきたい。

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 フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリの1957年の姿を描いている。伝記と紹介する記事があったが、1年前後の出来事に絞り込んでいる。

 57歳のエンツォは息子を亡くす。事業はフェラーリが販売不振で倒産か身売りの危機を迎える。愛人がいて12歳の婚外子もいる。これが妻のラウラ(ペネロペ)に知られてしまう。妻は共同経営者であり、株式を握っている。愛人からは息子の認知を迫られている。絶体絶命に思われるが、エンツォは泰然自若として事業も家庭も突き進んでいく。 

  レースドライバーを励まし、他方で会社存続を画策し、さらに妻や愛人ともうまくやっていこうとしている。このあたりアダム・ドライバーの演技が見もの。老け役が似合う。この人、声の響きがよい。

  ラストは公道でのレースのシーン。1600キロを疾走する。これが、迫力がある。後半のみどころ。

 エンドロールに、エンツォの息子が現在フェラーリ社の副会長になっているとのテロップがでる。このぐらいは書いてもネタバレとは言われないだろう。

 

2024年7月11日 (木)

『方舟を燃やす』

 角田光代の『方舟を燃やす』を読み終えた。

 主人公ふたりの半生を描いている。1967年に生まれた飛馬は鳥取の公立高校を出て東京の私立大学に入る。そして都庁・区役所に勤める。もう一人の不三子は1967年当時は中学生。高校を卒業し製菓会社に勤める。やがて結婚、二人の子を設ける。

 飛馬は小学生のときに母親を亡くしている。その死のきっかけをつくってしまったのではないかという重荷を背負っている。不三子は料理教室に通い、そこで玄米食とか無農薬低農薬野菜の信奉者になる。家族はその食事を受け入れない。面と向かって反対はしないが、弁当をだまって捨てている気配がある。不三子は自然食の延長で子に幼児用ワクチンを打つのを拒んでいた。

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 この物語のキーとなるのは、噂とかオカルトとか予言ブームである。コックリさん、ノストラダムスの大予言、口先女・・・。大きな事件が起きるとさまざまな偽情報がとびかう。多くの人はそれを信じないまでも懐疑的になったりする。飛馬も不三子もそうである。ふたりの暮らしが交互に描かれ、出会うことはない。終盤まで。

  途中、気になったのは「方舟を燃やす」というタイトルである。方舟はなにを象徴しているのだろうか。ノアの方舟? ノアが方舟を燃やしてしまう? それとも神が燃やす? いや、主人公自身が燃やしてしまうのか? などと連想が広がる。

  物語は、だれもが想像するような事件というか世相が描かれる。パンデミック、コロナ禍である。ずいぶん噂や偽情報が飛び交った。いまとなっては半分ぐらい忘れてしまっている。

 物語は、移ろう世相の中を生きていく二人を描いている。

2024年7月 9日 (火)

「ドライブアウェイ・ドールズ」

 命にかかわる危険な暑さだと予報士はしゃべっている。

  日なたにでるとたちまちくらくらする。炎天は避けようとおもうが、日陰がない。出歩かない方がよいが、家に閉じこもるのもおもしろくない。コーヒーショップで涼むのがよい。映画を観るのもよい。

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 アートセンターで「ドライブアウェイ・ドールズ」を観てきた。コーエン兄弟の弟・イーサン・コーエン監督作品である。

 コーエンは兄弟で映画を作ってきた。今回は弟のイーサンが単独で撮った。どんなあじわいの作品になっているのか、楽しみだ。

 二人の若い女性、ジェイミーとマリアンが主人公。車を運搬するバイトにありつき、ドライブ旅行に出かける。二人は男嫌いというわけでもなさそうだが、同性愛の関係にある。旅先ではレズビアンバーで過ごしたりする。お気楽な旅のように思われたが車には見知らぬスーツケースが載っていた。あっとおどろく品物だが、ここでは言わないでおく。というか、言うのをはばかる。隣の座席にいた外国人はゲラゲラ笑っていた。そして、このスーツケースを狙うギャングに追いかけられることになる。

  このギャングがおバカさん。ギャアギャア喋りまくるだけで、怖くはない。コーエン作品によく登場するお笑い系の連中である。

  ということで、ばかばかしいお話。コーエンファンは、このばかばかしい雰囲気が好きなのだ。

  ちょい役で、マット・デイモンが出ている。友情出演といったところ。マット・デイモンは「トゥルー・グリット」にも目立たない脇役で出ていた。たぶんコーエン監督と仲がいいのだろうな。

2024年7月 7日 (日)

ヤマユリの気持ち

 麻生区の区の花はヤマユリである。

 この地にはかつてヤマユリが自生し、たくさん咲いていた。で、百合ヶ丘という地名がつけられた。だが、いまは見られなくなった。理由は都市化により緑地が減ったこともあるが、温暖化と考えてよいだろう。

 この風土にヤマユリは向かなくなった。それでも昔の姿を取り戻そうとする活動も続けられている。

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 麻生市民館ではヤマユリ植栽普及の展示会が開かれている。ちょっとのぞいてみた。写真がそれ。

 麻生区のあちこち、公園などで栽培が続けられている。種をまいてから花が咲くまで5年ぐらいかかるという。長いが、自生できるようになり花を咲かせる場所もあるそうだ。

 麻生区でユリというとタカサゴユリである。この10年でずいぶん見かけるようになった。タカサゴユリは台湾原産である。温暖化で北上してきた。主役はタカサゴユリに置きかわっている。

 頑張れヤマユリと言いたいけれど、ヤマユリの気持ちはどうか。

  勘弁してくれ、熱中症になっちゃう、もっと涼しい場所で咲きたいとヤマユリは悲鳴をあげているようにも感じる。

2024年7月 5日 (金)

「光る君へ」

 大河ドラマ「光る君へ」は好評で視聴率もよい。当然のことながら『源氏物語』もブームになっている。

 2008年前後にも現在ほどではないけれどブームになったのをご記憶だろうか。『源氏物語』が書かれて1000年になるということで、関連本が出され、映画化もされた。

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 あのころ、源氏をざっと読んだ。さしておもしろくはなかった。というより難しかった。こちらの予備知識も不足していた。あれは入門書を読んでから現代語訳を読む。あるいは原文を横に置いて現代語訳を読むのがよいとわかった。

 ストーリーは光源氏の女性遍歴を描いたものに違いないが、後半になるとそのドンファン的生き方がひっくり返る。

 源氏は、父・桐壺帝の後添いである藤壺と密通し、子を生してしまう。時を経て、あらたに妻とした女三の宮を柏木(源氏の友人である頭の中将の息子)に寝取られてしまう。三の宮は懐妊する。かつて自分がやったように柏木にやられてしまう。因果応報である。

 華やかな女性遍歴は、日が陰るように事態はひっくりかえってしまう。シャイニング・プリンスは光を失っていく。このストーリー展開がおもしろい。卓越している。長く読み継がれてきた理由がそこにある。

 ところで、「光る君へ」、放送開始から半年になるが、まひろはいまだ『源氏物語』を書き始めていない。はやく書けよ、と言いたい。

2024年7月 3日 (水)

 五月晴れ

  きのう、川崎北部は晴れた。ひさしぶりに陽を浴びたような気がする。

  五月晴れである。7月になったが旧暦ではきのうは5月26日。梅雨の合間の晴れを五月晴れというが、ぎりぎりの五月晴れである。

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 月は29.5日で地球を一周する。旧暦では、一ケ月を29日と30日が交互になるようにしている。月の満ち欠けと会わせている。それだと、一年が354日になる。11日ほど足りない。365日にあわせるように3年に一回ぐらいの頻度で閏月を設けている。新暦(太陽暦)に閏年があるように旧暦にも微調整をしている。

  旧暦は完全な太陰暦ではない。これを太陽太陰暦と称している。地球が太陽を回るのを優先しているからだ。

  きょうもまずまずの天気。雨は降らない。が、蒸し暑い。

  スタバで読書。コーヒー(ブレンド)が以前に比べ苦くなった、ような気がする。コーヒー豆が値上がりしているので、安い原料に切り替えたのかと勘ぐってしまう。

2024年7月 1日 (月)

「おらが村のツチノコ騒動記」

 ツチノコを見た! などの話題がマスコミを騒がせたのは昭和のおわり頃、今から30年以上前のことである。全国各地でツチノコ発見の情報がマスコミに紹介された。見たという情報がもっとも多かったのが岐阜県の東白川村。白川というと合掌造りで有名な白川村と勘違いされるが、あれとは関係ない。飛騨に近いが美濃地方である。岐阜県の真ん中あたりに位置する。

おらが村のツチノコ騒動記」はツチノコをめぐるドキュメンタリーである。中野のポレポレで上映されていた。知人がそれを観て、DVDを買ってきたというので、借りて観た。

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 私は岐阜のこの辺りならよく知っている。母親の実家が東白川村のとなりの白川町である。夏休みになると長期間、白川に行き、いとこたちと川遊びをした。毎日が楽しかった。父親の実家(飛騨、現在の下呂市)にも行ったが、こちらにはいとこはいなかったので、長く滞在することはなかった。

 山里であり、鮎がたくさん獲れた、棒葉鮨もうまかった。秋は、松茸、柿など名古屋に送ってもらった。

 で、ツチノコであるが、それが白川あたりとは知らなかった。聞いたこともなかった。ツチノコがいるなんて信じられない。マムシがカエルを呑み込んでいたのを見たのであろうと思っていた。それが東白川では、見たという人がたくさんいるんだそうだ。

 平成元年以降、探索イベントが開かれている。ツチノコを信じる人、観光資源になると考える人もいるから、村を挙げての行事となり現在まで続いている。

 夢があるのはよいことだ。監督の今井友樹さんはここ東白川村出身。現在の住まいは岡上(麻生区)。いちど会って、白川周辺の自然について話し合ってみたいと思っている。

 白川周辺は茶の産地である。映画でも茶畑が映し出されている。耕地面積は広くないので販売量は少ないから全国区ではない。「白川茶」として岐阜や愛知県では売られている。ここのお茶は旨い。白川茶でも、田代という地域で作られたものがとくに旨いと、母はつねづね語っていた。

 

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