新札を手にしてません。
新紙幣が発行されて一ヶ月以上たつ。いまだお目にかかっていない。
銀行で二度ほど金をおろしたが、いずれも旧一万円札だった。お釣りでもらう千円札も旧札。あれほどテレビでは新札新札と大騒ぎしていたのに、出回らない。ふつうに手にするまでにはしばらく時間がかかるらしい。ま、どうでもいいけど。
悪貨は良貨を駆逐するということばがある。グレシャムの法則。あれは「悪貨は良貨を秘匿する」と言うのが正しい。
江戸時代、小判(金貨)を何度も改鋳した。金の含有率を減らしてである。旧小判の方が価値がある。すると旧貨幣は手元に残しておき、新貨幣を使おうという気になる。旧小判(価値の高い良貨)は流通せず、新小判(悪貨)ばかりが流通することになる。つまり、良貨は秘匿されることになる。
100両貸していたなら、旧貨幣で返してくれ、新貨幣なら金の含有量が減った分を上乗せして返済してもらわないと困るといったもめごとも起きた。
幕府には、旧小判を回収して、原料の金をため、財政再建をしようとする思惑があったが、想定通りには金は回収できなかった。結局、プレミアムをつけて両替商などと取り引きすることになった。それで、ようやく新小判が多く出回るようになった。当初の思惑ほどではなかったが、それでも財政再建には多少の効果はあった。このあたり、学校の歴史テキストには出てこない。私は山室恭子さんの著作で改鋳事情を知った。
現行のお金は紙幣だから良貨も悪貨もない。それで、旧のまま。渋沢さん、津田さん、北里さんがふつうに出回るには時間がかかるようだ。でも、暮らしには関係ない。
涼しくなれば、少しずつ出回るようになるだろう。秋の虫と同じか。
まだ、暑いからねえ。
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