「本日公休」
理髪店を描いた小説や映画は穏やかなものが多いように思う。
理髪師はハサミや剃刀を手にしているが、客は喉を切られるなどとはまったく思っていない。無防備。ゆったりシートに身を沈め、極楽気分でいる。散髪がおわれば、さっぱりした気分で店を後にする。穏やかである。
台湾映画「本日公休」を観てきた。台中の街にある小さな理髪店が舞台。ほのぼのとした映画である。高齢女性のアールイがひとりで店を切り盛りしている。娘たちは独立し、台北などで暮らしている。店の客は常連ばかりである。後頭部にもう一つの顔があると語る。長年、髪を切ってきた職人の感慨である。
長く店に来ていた医者が来ないので電話をしてみると病に臥せっているという。彼女は出かけていって髪を切ろう思い立つ。店には、本日公休という札を掲げて。おんぼろのボルボで出かけるのだが、ケータイ電話を忘れていったので、家族は連絡がとれなくなってしまう。といったストーリーである。
会話はユーモアがあってくすりと笑わせてくれる。台湾は中国本土から狙われている。政治的には厳しい面もあるけれど、さしあたっての日常はのんびりしている。
床屋を舞台にした落語の「浮世床」も長閑なものだ。たわいもないおしゃべりが続く。
ついでのひとこと
桂雀々が亡くなった。享年64.頑丈そうだったが、あっけない。汗をかきながらのマシンガントークは逸品の芸だった。志らくがかつて、金を払ってでも聴きたい噺家は、市馬と雀々の二人だけだと語っていたことがある。プロからも評価されていた。
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