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2024年12月30日 (月)

『源氏物語のこころ』

 ことしは紫式部の年だった。NHKの「光る君へ」が好評だったこともあり、『源氏物語』もひろく読まれた。といっても原本が読まれたわけではなく、現代語訳とか解説書である。

  十数年前にもブームがあった。『源氏物語』千年紀である。そのとき少しかじった。しっかり読んだわけではないけれど、柏木とか女三の宮のことを知った。

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 先だって箒木蓬生の『源氏物語のこころ』を読んだ。以前、当ブログで箒木の『香子』をとりあげた。全5巻。『源氏物語』」と紫式部を描いたもので、大河ドラマと設定は重なる。

 で、本書『源氏物語のこころ』。『源氏物語』には「こころ」が5000以上つかわれているそうだ。「心細さ」とか「心憂し」とか「心やすし」といった表現も含めて。そんなに多いのかと驚く。本居宣長は「もののあわれ」の文学と言ったが、「こころ」の文学と言ってもよいのかもしれない。

「こころ」の意味は幅広い。本書は、さまざまな「こころ」をとりあげ、用例の意味を解説している。現代文に訳したものしか読んでいない者にとっては驚きだが、翻訳の妙というか深さを感じる。

 登場する主な女君たちの心がどのようにとりあげられているかを解説した章がある。

  一人だけ記しておくと、紫の上。心はつぎのように使われている。「心細し」「心憂し」「心うつくしく」「心用い」「まめやかなる心ばえ」「すぐれたる心ざし」「心にくし」「二筋の心づかい」など。多岐にわたっている。深くて簡単には説明できない。

 ついでのひとこと

  先だって、NHKBSで「新・源氏物語」をやっていた。1961年、60年以上前の映画である。主演は市川雷蔵。桐壺妃と藤壺は寿美花代の二役。原作に忠実で、藤壺の出家、源氏の須磨への退去あたりまで描かれている。

 さらにひとこと

 源氏とは関係ない。石井英夫さんが亡くなった。産経新聞の一面コラム「産経抄」を長く書き続けた。35年にも及ぶ。名コラムニストだった。産経新聞は購読してなかったからいつも読んでいたわけではないけれど、折に触れ目を通した。

 耳かき一杯の毒を盛るのを心がけていたというが、毒ではなかった。産経だから右よりの論調を感じることもあったけれど、朝日の「天声人語」と読み比べればバランスが取れたし、そういう視点もあるのかと感心することも多かった。

 わが本棚にそのコラムを集めた『クロニクル産経抄25年』がある、上下巻で六法全書より分厚い。たまに開いて読んでいる。色褪せてはいない。

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