「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」
昨年、唐十郎が亡くなった。その追悼で、唐十郎と劇団の活動を描いたドキュメンタリー映画がアートセンターで上映された。そんな映画があることは知らなかった。監督は大島新。
時代は2006年から07年にかけて。唐十郎は『海底二万哩』に触発された「行商人ネモ」の台本を書き上げ、それを舞台にする。そのプロセスである。
わたくしごと。『海底二万哩』を読んだのは小学6年のとき。なにかの賞品でもらった。ジュール・ヴェルヌの本はいくつか読んだが、最初に読んだ『海底二万哩』がいちばんおもしろかった。登場人物は潜水艦の艦長ネモ。唐のタイトルもそこから採られている。
書いたシナリオは劇団員によって清書され、製本される。稽古は一見、和気藹々としている。唐はにこやかに笑う。唐の笑顔がいい。それが突然機嫌を損ね、怒り出す。すさまじい怒鳴り声。劇団員は震え上がる。が、怒りは長くは続かない。ふたたびもとの稽古に戻る。
状況劇場を解散した後の唐組。劇団員を20年も続けているベテランが二人いる。その二人が緩衝役となって、唐組をまとめている。メンバーの給料は安い。当て書き(出演者にあわせて台本を書くこと)の団員だけがもらえる。あとはちょろちょろ。俳優といっても大道具小道具、食事の世話などなんでも行う。そうやって舞台が作られる。
大阪での公演初日までが描かれる。劇団運営とは大変なものだと思う。唐のようなエキセントリックなリーダーについていくは厳しい。しかし、団員は唐の魅力に引きつけられて組を離れられないでいる。それがなんとなくわかる。
エンディングで、この映画は70パーセントがノンフィクションで20パーセントがフィクション、あとに10パーセントはどちらかわからないと字幕がでる。演出もあるってことか。唐の振る舞い自体が演劇的なんだと理解する。
唐は芝居という仮面を外されない人生を生きてきたのだろう。
« 地下水道 | トップページ | 生田寄席 柳家小せん »
「映画」カテゴリの記事
- 「リアル・ペイン」(2025.02.03)
- 「オークション 盗まれたエゴン・シーレ」(2025.02.01)
- 「雪の花」(2025.01.30)
- 「室町無頼」(2025.01.24)
- 「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」(2025.01.14)
« 地下水道 | トップページ | 生田寄席 柳家小せん »
コメント