「オークション 盗まれたエゴン・シーレ」
黄斑変性の手術を受けて1年半になる。歪みは8割方なくなった。2割は残っている。手術としては成功なんだろうが、視力は回復しない。眼底がでこぼこになっている。片目では新聞が読めない。見出しも読めなくなった。老化といえばそれまでだが、やっかいなことだ。
昔の仲間と会食した折り、黄斑変性による歪みをエゴン・シーレの絵のようだと説明した。エゴン・シーレって誰か、だれも知らなかった。おまえら、絵画の教養はないのかと、毒づいてやった。スマホで、エゴン・シーレ 自画像、と入れてみれば、最初にヒットする絵がそれ。斜めからの画像だが、片目だけ大きい。これに鼻の下を異様に長くすると変形した画像になる。あるいは、クレヨンしんちゃんのママ・みさえ。大きな片目だけのイラストを想像してみていただきたい。そんなふうに見える。
で、話は変わって、映画。アートセンターで「オークション 盗まれたエゴン・シーレ」を観てきた。かつてナチスに奪われ行方知れずとなっていたエゴン・シーレの絵がみつかり、オークションにかけられるという内容である。
エゴン・シーレの絵は「ひまわり」。ゴッホの「ひまわり」に触発され描いたとされるが、SOMPO美術館に展示されている「ひまわり」とはまったく異なる。ゴッホはひまわりをたくさん描いているからどのひまわりに触発されたのかはわからない。以前、オランダでたくさんのゴッホの絵をみた。ひまわりだけでも20以上あったような気がする。枯れたひまわりが多かった。
映画は、労働者のアパートでエゴン・シーレの「ひまわり」が見つかったところから始まる。ナチスに奪われ、ながく行方がわからなくなっていたものだ。
パリのオークションハウスで働く競売人のマッソンは鑑定を依頼され、元妻とともに労働者のアパートを訪ねる。贋作ではない。以前、そこに住んでいた家族が所有していたもののようだ。ナチスが奪ったものが、戦後、その住民の手に渡った。所有者はすでに亡くなり、遺族はアメリカに移り住んでいることがわかる。その労働者は、所有権を主張せず、前の所有者の遺族に譲りたいと言う。あれこれあって、マッソンはオークションにかけるところまでたどり着く。
オークションなら欲の塊のような人物ばかり集まる。最初に見つけた労働者は幾分かの分け前を主張することができるが、無欲であり恬淡としている。無欲と強欲の対比が面白い。ついでに言うと、私も欲はない。欲はむかしに捨てた。
サブタイトルにエゴン・シーレとあるが、代表作の「自画像」も「哀しみの女」も出てこない。
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