無料ブログはココログ

« 嘔吐と点眼 | トップページ | 「夏の庭 The Friends」 »

2025年2月 9日 (日)

『癲狂院日乗』

  車谷長吉が亡くなって10年がたつ。

  車谷長吉の本を好んで読んできた。ゆっくりした流れの中を漂っているような気分になる。中身は、率直。露悪的であったりする。恨み辛みも平然と書いているところがおもしろい。

癲狂院日乗』を読んだ。昨年出版されたものだ。「日乗」とあるように日記である。公開を前提として書かれたものだが、書かれては困る人いる。とりわけ嘆き悲しむのは叔母。著者が亡くなり十年がたち、その叔母も亡くなったので出版に踏み切ったと、連れ合いの高橋順子があとがきに記している。差しさわりのある編集者なども一部を記号にしている。

250129110845793

 平成10年4月から始まっている。強迫神経症に悩まされている。妻とは仲がよい。「順子ちゃんがいないので淋しい」と書いたりしている。ほぼ1年にわたっての日記である。

 面白いのは伊藤整文学賞を辞退した経緯。ただ伊藤整が嫌いだっただけ。賞金の壱百萬を棒に振る。意地っ張りなのだ。

 この年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞する。こちらは素直に、というか喜んで受ける。そして直木賞バブルとでも言うべき日乗が続く。

 作家は犬、編輯者に追い立てられたり、餌をあたえたり、食わせてもらったり、出版社の飼い犬なのだと嘆く。笑える。

「日乗」というと永井荷風の『断腸亭日乗』がある。あれより断然、おもしろい。車谷を知らない人にも奨めたい。

« 嘔吐と点眼 | トップページ | 「夏の庭 The Friends」 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 嘔吐と点眼 | トップページ | 「夏の庭 The Friends」 »