『癲狂院日乗』
車谷長吉が亡くなって10年がたつ。
車谷長吉の本を好んで読んできた。ゆっくりした流れの中を漂っているような気分になる。中身は、率直。露悪的であったりする。恨み辛みも平然と書いているところがおもしろい。
『癲狂院日乗』を読んだ。昨年出版されたものだ。「日乗」とあるように日記である。公開を前提として書かれたものだが、書かれては困る人いる。とりわけ嘆き悲しむのは叔母。著者が亡くなり十年がたち、その叔母も亡くなったので出版に踏み切ったと、連れ合いの高橋順子があとがきに記している。差しさわりのある編集者なども一部を記号にしている。
平成10年4月から始まっている。強迫神経症に悩まされている。妻とは仲がよい。「順子ちゃんがいないので淋しい」と書いたりしている。ほぼ1年にわたっての日記である。
面白いのは伊藤整文学賞を辞退した経緯。ただ伊藤整が嫌いだっただけ。賞金の壱百萬を棒に振る。意地っ張りなのだ。
この年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞する。こちらは素直に、というか喜んで受ける。そして直木賞バブルとでも言うべき日乗が続く。
作家は犬、編輯者に追い立てられたり、餌をあたえたり、食わせてもらったり、出版社の飼い犬なのだと嘆く。笑える。
「日乗」というと永井荷風の『断腸亭日乗』がある。あれより断然、おもしろい。車谷を知らない人にも奨めたい。
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